おい。
おい、アリババ。
てめー全く聞いてねーな。

ったく、いつまでも泣きながら黒炭抱いてても仕方ねーだろうに。
俺はもうそこにいねーって。

お前は黒いジンの中にまで来てくれた。
俺が情けねー本音までぶちかまして、大嫌いだと叫んでやったのに。

お前はやっぱり光を失わなかったな。

幼い頃からずっと一緒で、だけど容姿から生き方まで呆れるほど対照的だった。
太陽みたいな金髪、琥珀みたいな瞳。
俺は闇に染まった髪と深淵覗いてるみたいな黒い目。
お前はお袋さんが死んだ後も、商売したり靴磨きしたりして稼いでいた。
俺は手下を使って盗みを繰り返した。
スラム街で一緒に育ったくせに、真っ当すぎるお前が大嫌いだった。

だからお前が霧の団のアジトにやってきたとき、
今度こそお前を利用して、憎きアブマドを倒してやると決めた。
俺が王に成り代わってやる。
生まれなんて関係なく、のし上がれることを証明してやる
・・・ってな。

ずっと、それが願いだと思いこんでいたが、
お前が人間の違いを何とかしようと涙を流したあのとき、漸く分かった。

俺は、王になりたかったんじゃない。
王になるだろうお前と並びたかったんだ。

猛獣並に強い女や、怪しい術でお前を庇うように現れた子供みたいに、お前と一緒に戦いたかった。
気づくのがどうやら遅すぎたがな。

俺は死んだ。

しかし、どうやら・・・「お前の力になる」ことはできるみたいだ。

俺が闇の金属器で手に入れたこの魔力。
真っ黒に染まってた筈なのに、お前が真っ白で透明なもんに変えちまった。

だから、お前にやる。

ちょっとばかり大きすぎる力かもしんねー。
普通の奴なら力に押し潰されるか、振り回されるか、
力に頼って傲慢になったりするだろう。

けど、お前なら。

泣き虫で、頼りねー、王族のくせに威厳もこれっぽっちもねー。
なのに「誰かのために」と心が定まると、スラムの奴らも平民も貴族も関係なく
どいつもこいつも一つに纏めて、光へと導くことのできるお前なら。

このくらい、軽いだろ?

俺はずっとお前と戦ってやる。
だから、お前はお前の「正しい」を貫いてくれ。

なあ、相棒。

一緒にいてくれて、ありがとな。

fin.