グランドラインの入り口、リバースマウンテン。
その岬に、一人の灯台守と山のように大きな鯨がのんびり暮らしているという。
そんなある日。
「・・・ん?」
ばさっと落ちた紙の束。
何気なく拾い上げる。
見覚えのありすぎる手配書が彼らの無事を示していた。
「また仲間が増えたか・・・。ラブーン、麦わらは賑やかだな・・・」
「ブオ!」
楽しげに答える大きな鯨。
「7枚、8枚・・・9枚目、・・・!?」
9枚目。
顔は全く見覚えがない。
何故なら、顔すらない・・・骸骨。
だが、何か気にかかる。
「この、シルクハット・・・この頭・・・」
恐る恐る名前を確かめる。
目を見開く。
「・・・ブオ?」
急に動きを止めた気のいい灯台守を
不思議そうに鯨が見守る。
数瞬、呼吸すら止めていた彼は
やがて目を閉じた。
「・・・そうか・・・そうか・・・!!!」
知らず、手配書に落ちる滴。
目を押さえたまま、震える声で呼びかけた。
「ラブーン・・・!!!お前は・・・正しかった・・・!!!」
「・・・?」
流れる涙を拭うこともせず、嘗ての仲間を知る灯台守は一枚の手配書を鯨に見せた。
「・・・ブオ?」
「麦わらの新しい仲間だ・・・。
懸賞金、5000万ベリー・・・名前は、」
そこでクロッカスは豪快な笑顔を見せる。
「・・・『ブルック』。
通称『“鼻唄”のブルック』!!!!
ラブーン、お前の仲間だ・・・・!!!!」
鯨の動きが止まる。
「生きてたんだな、あいつは・・・!!!」
50年前に別れた仲間。
必ず帰ってくるとラブーンと約束し、そして・・・
消息不明となった。
クロッカスは、もう彼らは戻ってこないと思っていた。
・・・しかし。
「あいつは、約束を守っていたんだな・・・ラブーン!!!
いつかきっと、麦わらと共にここへ帰ってくる!!!」
「ブオオオオオオオ!!!!!」
* *
「あーあ、まーた懸賞金上がっちゃってるわよ」
「なななナミっっさん!!おれの、おれの手配書は・・・!!!!」
「お前は落書きだ」
「・・・・!!!!!!」
「おれは、おれは・・・50ベリーじゃないだろ?な、ナミ?」
「待ってチョッパー。あ、上がってるわよ」
「ほ、ほんとかー!!!」
「うん、100ベリーだって」
「!!!!!!」
「おやー手配書ですか。皆さん、高額ですね~」
「なーに言ってんだブルック。お前も載ってるぞ」
「私もですか?おやおや~」
「ちゃんと骸骨だな」
「ぎゃああああああああ!!!が、ガイコツーーーー!!!」
「「「「ってお前だろ!!」」」」
「でもよかったじゃない」
「はい?」
「灯台守のクロッカスさん。確かずっと新聞読んでたわよね?」
「んーそうだったな」
「成程。ブルックの手配書も届いたってわけだ」
「!!!」
「そう。なら、ラブーンもきっと、あんたが生きてるってわかったんじゃないかしら」
「・・・!!!!
どどどどどうしましょう!!!
私、骸骨ですヨホホホホホ!!!??」
「それがどうしたよ」
「わ、私だと、わ、分かるでしょうか!?」
「んあ?名前書いてあるじゃねえか」
「ええ!!!?ほ、本当ですヨホホホホホ!!!!????」
「・・・あーブルックが壊れてるよ」
「放っておけば?」
「あ。ところでナミさん」
「もう復活したの?」
「今日は、パンツ何色ですか?」
「答えるかああ!!!!」
海原をゆく海賊船に笑い声が響く。
気のいい海賊達は、引き返すことなく真っ直ぐに進む。
彼らの夢を叶えるために。
遠い空で待つ、仲間に会うために。
fin.