幸せの蒼い鳥

※モンハンワールドアイスボーンの環境生物のネタバレです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、仕方ない。今日も行くか」
「こればっかりは運やしなあ・・・」

多少げんなりしているケットを引き連れ、あたしはまずは集会エリアに移動した。中央の円形テーブルにつき、あたしはばん、と高級お食事券を叩きつける。配膳アイルーがこてんと首を傾げた。

「シャルアしょちょー、今日もですかにゃー?」
「勿論だ!これは、あたしのハンターとしてのプライドにかけて達成させてやる!」
「運にハンターの矜持は関係あらへんやん」
「黙れケット!」

頼むメニューはユニーク酒定食!
ガッツリ平らげたのだが。
発動したお食事スキルをみて、あたしは愕然とした。

「なっ!『ネコの天気予報』、だと・・・!?」
「あかんやん。シャルアはんの今日の運、いけてないやんか」

ケットがさくっと突っ込みをいれた。
ネコの天気予報。
お食事で発生するスキルのひとつ。
行き先のフィールドの天候が必ず悪くなると言うスキルだ。
普通のクエストなら問題ないのだが。

「・・・晴れない、な」
「確実に荒れるで」

あたしはがっくりと膝をついた。

「食事効果消すために、別クエストでも行くか・・・」

あたしは瘴気の谷でラドバルキンという矢鱈と転がるモンスターを仕留めて、また集会エリアに帰還した。
再度、高級お食事券を叩きつける。

「リベンジだ!!!」
「まいどおおきににゃー」

ユニーク酒定食を完食して。
発動したスキル。

ネコの生物博士!!

レア環境生物の出現確率が上がるスキルだ。

「鳥よ、今度こそこい!!!」

レア環境生物。

特定のフィールドに非常に低い確率で現れるレアな生物。戦闘はなく、接近して捕獲ネットで捕まえるか、釣り上げるしか入手の術はない。

あたしは全体マップを広げた。
狙うはレア環境生物の、ブルーディーヴァという青い鳥だ。

「やつの出現条件は・・・」

場所・古代樹の森または大蟻塚の荒れ地
時間・昼または夜
天候・晴れ
注意・隠れ身の装衣着用中でなければ逃げられる。

「古代樹の森、晴れやな」
「よし、行くか」

古代樹の森。

その名の通り、フィールド中央に巨大な古代樹が聳え、豊かな森の広がる狩り場だ。ただ、上下左右に複雑に根や枝が分かれており、よく迷子になる。

ともかく情報に従い、北東キャンプに飛ぶ。
近くにいれば鳴き声が聞こえるらしいが、特になし。

まずは、隠れ身の装衣を着て、マヒダケ付近。
いない。
次にウチケシの実付近。
いない。

「やはりいないか」
「まあレアやしな」

次に古代樹キャンプに飛ぶ。
雷光虫付近にいるらしいが、

「いないか」
「やな」

滑空の装衣を身につけて合計5分経過を確認し、あたしは古代樹の森を出だ。

気を取り直して、続けて大蟻塚の荒れ地にフィールドごと移動。途中で隠れ身の装衣を羽織り、初期南キャンプから北西の崖を、蔦を伝って上っていく。
この頂上にいるらしいのだが。

「こっちも駄目か・・・」
「大蟻塚の出現ポイントはここだけやな」
「釣りでもするか・・・」

滑空の装衣を選択し、近くの池でピンクバレクスを釣った。もういらないのだが。

「また鳴き声がしない!」
「あーシャルアはん、蔦から落ちとるがな」
「ミスっただけだ!」

「崖に近いがまだ鳴き声がしない!」
「シャルアはん、崖から落ちすぎや」
「道を反れただけだ!」

「枝が絡み合いすぎて分からん!」
「シャルアはん、目的の光蟲から離れとるで」
「ああもう!いつ出てくるんだ!?」

どれだけ古代樹の森と大蟻塚の荒れ地を往復しただろうか。
流石にだれてきたあたしは、古代樹キャンプで隠れ身の装衣をやる気なく肩に引っ掻けた。

「あー。いるかなー」
「シャルアはん、バテすぎやろ」
「うーるーさーいー」

ケットの指摘に適当に返したところで、ケットが小声で鋭く叫んだ。

「シャルアはん!」
「なんだー?」
「鳴き声や!」
「何だと!?」

急いで雷光虫の場所へ枝を渡っていく。そして、鳴き声がする先、高枝にいるのは、尾の長い青い鳥。

ブルーディーヴァ1

「いた!」
「やっとかいなー!」

隠れ身の装衣は2分しかもたない。あたしは、逸る心を押さえて近づき、捕獲ネットを構えた。が。
構えたまま、あたしは動きを止めた。

「シャルアはん?」
「・・・届かん」
「へ?」
「やつの居場所が遠くて、捕獲ネットの射程に入らん!」
「なんやて?!」

捕獲ネットで捕獲する際、射程範囲内であれば、オレンジ色の枠が表示されるのだが、白色のまま。
つまり、やつが高い場所にいるため届かない。

「どうしろというんだ!?」
「ゆうても隠れ身の装衣はもう切れてしまうで!?」
「くそっ!」

闇雲に白色枠のまま捕獲ネットを発射したが、やつは飛び立って更に高い枝に移ってしまった。

「あいつ・・・!!」

そうこうしているうちに、隠れ身の装衣が切れてしまった。次に使えるのは5分後だ。
ジリジリしながら5分待つ間に、やつは逃げてしまった。

姿はあれども捕まえられず。
あたしは、翌日にまた高級お食事券を消費して、大蟻塚の荒れ地に飛んだ。無言で歩くあたしにケットがぽんと腰の辺りをたたく。

「まー。昨日鳥の鳴き声も判明したんやし、幸先ええやないか」
「そうだな・・・」

山頂に至る坂道で。
あたしは、はたと立ち止まった。
ケットも口を閉じて、停止する。

「「・・・」」

坂道の左手前方。
ハンターでは登れない僅かな亀裂の上。

美しい鳴き声の青い鳥が止まっていた。

ブルーディーヴァ2

「・・・届く気がしないな」
「そやな」

あたしは、取り敢えず隠れ身の装衣を発動させる。
近づき、見上げて捕獲ネットで狙いをつける。
表示の範囲は白枠。

「遠い。」
「やっぱりかー」

やけくそで捕獲ネットを使うものの、やつはやはり大空へ飛び去ってしまった。
あたしは、拳を振り上げた。

「なんっなんだ、あいつは!?」

情報と違うところに現れては、ハンターを嘲笑うように去っていく。

「あいつ、あたしを馬鹿にしてるな!?」

余りの悔しさに地団駄を踏んでいると、ケットがニヤリと笑った。

「いんや、チャンスやでシャルアはん」
「何処がだ!!?」
「まだ5分たってへんやろ」
「そうかっ!」

リセットマラソンは、1クエスト判定、つまり、探索でも5分は滞在しなければならない。
逆にいえば、5分以内で離脱すれば、リセットされずにまた出現する可能性が高い!

「直ぐに出るぞ!」
「了解や!」

一度古代樹の森へ行き、すぐさま蜻蛉帰りして
初期キャンプから全力疾走して、坂道を一気に駆け上がる。
案の定、澄んだ鳥の声が聞こえてきた。

「鳴き声や!」
「行くぞ!」

隠れ身の装衣を着けて蔦を登る。
その、途中で。
あたしはまたしても止まった。

「・・・なあ、ケット」
「・・・うーん」
「何故こいつは・・・頂上にいないんだ?」

蔦を掴んだまま、あたしは真横を睨みつける。
崖の途中に、ちょこんと止まって鳴いているのは、やはり青い鳥。

「シャルアはん、なんや恨みでも買ったんちゃうか?」
「初対面の鳥にそんなことするか!」
「初対面の鳥てなんやねん」

あたしは兎も角、左手で蔦を掴みつつ、奴に捕獲ネットの標準を合わせる。
今度は近いから、流石にオレンジ枠が最初から見えている。ばっちりのはずだ、が。

「蔦登り中は捕獲ネット使えないじゃないか!」
「うーん。」

そうなのだ。どうやら両手が空いてないと、捕獲ネットは作動しないらしい。
そこにいるのに!オレンジ枠だから捕まえられる筈なのに!!!

「これはまた一旦逃亡か・・・?」
「まあ登り切って上から狙ってみたらどうや」
「そうだな・・・」

諦め気味にあたしは、奴の真上から捕獲ネットを飛ばす。
1回目、ミス。
2回目、ミス。
3回目。

「・・・取れた!!!!」

捕獲

この手の中に、あの青い鳥!!!

「あーーーーー。疲れた・・・」
「よう頑張ったな、シャルアはん」
「まあ・・・取り敢えず、マイハウスに飾るぞ!」
「あいあいさー!」

あたしは拠点のマイハウスに速攻移動する。
二階の手摺に早速ブルーディーヴァを配置して。

マイハウス

「・・・なかなかいいじゃないか」

あたしは奴の前でにやりと笑う。
ブルーディーヴァは逃げることなく、美しい声で鳴き続ける。

「ええなあ、戦利品?」
「まあ・・・そうだが・・・。あたしにはこいつが捕獲できると分かっていたからな!」
「そりゃあ捕獲できるまで諦めへんしな」
「それもあるが」
「ん?」
「あたしはリーブという、世界一の男をゲットしたのだからな!こんな幸せの蒼い鳥くらい、捕まえられないわけがなかろう!」
「あーそうかいなー」
「適当に流すな!!!」

fin.

ブルーディーヴァ捕獲記念。
ほぼ、実話・・・(笑)。
どうしてこうも、捕まえられない高いところにいるんだろうな、この鳥は!!!
まあでも苦労した甲斐はありましたねー!!!