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新大陸・マイハウス。
この一角には小さな受け皿が置かれている。その上には神秘的な文様の刻まれた石が置かれ、時折淡く光る。
そしてその発光の後には、小さな巻物がどこからともなく現れている。

「ん?」

マイハウスにいるアイルーにオトモダチ探索隊派遣を依頼していたシャルアは、僅かな物音に受け皿を振り返る。
そして、ふっと笑みを浮かべると巻物を手に取り、広げた。

   *   *

その一ヶ月後。

「リーブ!」
「こんにちは、シャルアさん」
「全く。手紙サイズは転移できるのに人物はまだとは・・・。あたしの研究もまだまだだな・・・」
「いえいえ、瞬時に手紙を送れるだけでも画期的ですよ」
「そうだぜ、導きの星!あんたのお陰でギルド本部への報告も、物資の補給もスムーズになったのだからな!それにそんなもの完成してみろ、俺の仕事がなくなっちまう!」

がっはっは!と船長が豪快に笑う。
港では流通エリアを利用するハンター達で今日も賑わっている。
船から降りたリーブはシャルアと久方ぶりの再会を果たしていた。

「それで、リーブ。話とは何だ?手紙では出来ないことか?」
「はい。現在ドンドルマには新人ハンターが腕を上げてきておりまして、防衛の城塞も体裁を整えつつあります。一方、新大陸の更に奥に発見されたという未知の大陸・・・。いくら人手があっても余ることはないでしょう。そこで」

リーブが後方・・・船内を見遣ったのを合図に、小さな茶色の髪の少女がひょっこりと現れた。

「シェルク!?」

彼女ははにかむと、音を立てない独特の走り方で姉の前に駆け寄った。

「お姉ちゃん、元気?」
「ああ、元気だ。お前も元気そうで何よりだ。ん?ま、待て、ということは、リーブ!」

リーブはにっこりと食えない笑みを返した。

「はい。新大陸派遣の新たなハンターとは、シェルクさんのことですよ」
「そうか・・・!うん。シェルクが来てくれるなら心強い!」
「まあ、すぐさま参加という訳にもいかないんですけどね?」
「ん?」
「シャルアさんが来られる前に、総司令に面会していただいたのですが・・・」

   *   *

流通エリアの奥、会議スペースにて。
シェルクとリーブは新大陸の総責任者である総司令と呼ばれる壮年のハンターとテーブル越しに対峙していた。総司令は厳しい目でシェルクを見定めようとしていた。

「なるほど・・・。君がシェルクか。ドンドルマでの活躍は、リーブ町長から聞いている。実績、HR(ハンターランク)、そして姉があの導きの星、シャルアであるということから我々としては大変期待している。だが」

総司令の目が鋭く光る。
臆することなくシェルクは素早く問う。

「何か問題が?」

納得したように総司令は頷き、腕を組む。

「・・・ドンドルマと新大陸では、装備も戦闘方式もモンスターの生態も異なる。よってここでのHRは申し訳ないが1からとなる。その身で新大陸での戦い方を学んでHRを上げて貰いたい。そして、未知の大陸に行くためには・・・HR16以上は必須だ」

今度はシェルクが小さく頷いた。
新大陸の情報は、確かに姉シャルアから聞いてはいる。
だが、聞いているのと実際に体験するのとは雲泥の差だ。
ましてや、その彼らでさえ知らない未知の大陸に上陸するのだから、まずはこちらのやり方に慣れるのが先決だろう。

「・・・未知の大陸への出立期限はいつですか」
「天候次第ではあるが一ヶ月後だ」

一ヶ月。
姉シャルアは1年以上掛けてHRを800越えにしてきた。
ならば。

「解りました。それまでにHR100にしてみせます」
「シェルクさん!?」

背後で驚くリーブを放って、シェルクは総司令の目を凝視する。

「HR100であれば同行許可はいただけますか?」

シェルクの視線を受けて、ふっと総司令が初めて笑みを浮かべた。

「・・・いい目だ。よし、解った。其方がHR100を越えていたならば、選抜隊に抜擢することを約束しようじゃないか!」
「了解致しました」

総司令がテーブルを回ってシェルクの前に立つ。
何だろうと見上げたシェルクに、真っ直ぐ右手を差し出した。

「歓迎しよう。新米ハンター、シェルクよ!」
「よろしく御願いします」

其の手を重ねて、二人は握手を交わした。

   *   *

「と、いうやりとりがありまして」
「ったく。まあ確かに、新大陸の方式に慣れておく必要があるだろうし、シェルクなら簡単だろうが・・・」
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。必ずHR100にして、お姉ちゃんと未知の大陸に同行するから」
「・・・解った。シェルクを信じるよ」

fin.

後書き。
書いといて何だけど。
私の操作ではHR100は間に合わないな!!!(笑)
こっちのシェルクなら余裕だと思います!!