リミットブレイク

セフィロスを追うクラウド一行は、
ゴールドソーサーの真下に作られた天然の監獄、コレルプリズンを後にした。

勿論、彼らの動向はスパイであるケット・シーを通じて神羅に筒抜けだったりするのだが、
未だケット・シーの正体を知るものはなく、操縦者であるリーブにとっては拍子抜けするほど順調だった。

しかし。

コレルプリズンで知った、バレットの過去が頭から離れない。
コレルの住民が、反乱を起こして神羅に制圧されたという話は勿論リーブにも届いていた。だが。

神羅は魔晄炉の事故を隠蔽するために、その責任を住民たちに擦り付け、あまつさえ村を焼いていたとは・・・。

ミッドガルで魔晄炉を爆破したアバランチの行為を許すことはできない。
けれど、都市開発部門統括でさえ知らされていない神羅の闇があるならば、
今まで自分が知らされてきた事実は、真実だったのか?

自分が成してきたことは、本当に正しいのか?

リーブの迷いを余所に、クラウドたちの旅は続いていく。
バギーに乗っていても、砂漠のモンスターたちに出くわし戦闘になることが多いの、だが。

バギーの後部座席に辛うじてはまったデブモーグリの隣で
物珍しげに景色を見ている分身に
リーブは念で話しかけた。

『・・・ケット』
『なんやリーブはん』
『・・・先ほどの技、リミットブレイク、ですよね?』

パックマンのようなモンスターとの戦闘中、
ケット・シーは他の仲間のように
通常コマンドでは現れない『ダイス』で撃退したのだ。
その攻撃力は、デブモーグリのものではあり得ない威力だった。

『そうみたいやな』
『・・・貴方にリミットブレイクという機能はなかった筈ですが』
『そやなあ』
『・・・』
『・・・そーんな無駄に考え込まんでもええんちゃうか』
『ですが戦略に大いに関わりますし』
『ええやん。出たらラッキーくらいで』
『いえいえ、その割に目が揃ったときのダメージは大きいようです』
『ま、ボクの日頃の行いがええからやな』
『貴方はスパイでしょう』
『スパイにしたんは、あんたやで?』
『・・・そう、なんですが』
『そないに気にせんでも。
まー強いてゆうなら、ボクは感情があるから、やないか』
『感情、ですか』
『そや。ボクはリーブはんから感情を吹き込まれて動いてるんやろ?
そんで、リミットゲージは怒りのときのほうが早うたまる。
つまりや、リミットブレイクには感情がぎょうさん影響してる、ちゅーことや』
『みたいですね・・・』
『つまりや、あんさんがボクに感情を吹き込んだお陰で
序でにリミットブレイクまで搭載されたんちゃうか?』
『・・・確かに、可能性はあります。ですが』
『なんや?』
『・・・本体の筈の私がないのに、何故貴方だけあるんですか』
『何故も何も、あんさん戦闘したことないやないか。
そりゃー、リミットブレイクがあるかどうかも
分からんやろ』
『そ、それは』
『まあでも確かめるのはやめとき。
リーブはんがまともに戦えるとは思えんし』
『・・・否定できませんが、酷くないですか?』
『戦うゆーても、別にモンスターとかと戦闘するだけやないやろ。
あんたの戦場は、ボクらのおるとこやない。
今、あんたのいるとこ、やないか』
『・・・』

返す言葉が思いつかず、リーブは黙り込んだ。

fin.