本望

※FGOイベント「深海電脳楽土 SE.RA.PH」途中で、ハンスが黒幕の正体に感づいたら。黒幕についてはネタバレですのでご注意。
序でにハンスの概念礼装の独自解釈です。公式ではないのでご注意。

 

靱葛とサーヴァントたちの活躍で、敵対していたサーヴァントや逃げ遅れていた職員が仲間になる中。一晩明けた翌日、ガウェインが何者かに消されるという事件が起こった。
靱葛がサーヴァントを引き連れて外を調べている間、戦闘の出来ない私たちは唯一の安全地帯と言われる教会に引き籠っていた。職員たちは何やら二階で相談中らしく、一階には私とハンスしかいない。
床に遺されたガウェインの残留魔力を調査していたハンスが、しゃがみこんでいた態勢で頭を抱えた。

「そういうことか・・・!」
「ハンス?どうしました?」
「リーブ。ここに来る前、囚われた俺の画像を見たな?」
「は、はい。助けにいくにしても靱葛たちの協力が不可欠ですが・・・」
「その必要がなくなったぞ」
「え?」

ハンスがゆっくりと立ち上がり、教会のベンチに酷くやつれた様子で座り込んだ。私はその隣に座る。

「・・・何か、分かったのですね?」
「ああ。この世界の俺は囚われたのではない。自ら閉じ籠ったのだ」
「ええ!?ど、どうしてですか?」

余りにも想定外すぎる言葉に戸惑う。ハンスは右手で癖のある蒼い髪をぐしゃぐしゃと乱した。

「間違ってもこの特異点に巻き込まれないように先手を打ったに違いない!ああそうだな、BBがカルデアとやらに通信してきた時点でこちらの俺は悟ったのだろう!黒幕があれだとな!」
「あれ、とは?」
「前々回のマスターだ」

スパン、と返された言葉に暫し回想する。

「・・・前々回のマスター?確か、貴方が『史上最悪最低の悪夢になる欲望がある毒婦』と、言っていませんでしたか?」
「・・・。それだ」

ハンスらしからぬ憂鬱そのものの表情で、しぶしぶ頷いた。ただ、その目はいつも以上に真摯だった。
私も表情を引き締める。

「・・・非常に大事、なのですね?」
「ああ。だから引き籠った俺は『本望だ』といったのだ・・・!リーブ。この世界の俺は探す必要も助ける必要もない!何故ならば未曽有の大災害に匹敵する人災に遭わぬように逃亡しているだけだからな!まあ・・・ここまでの事態になるとは思わなかっただろうが」
「『未曽有の大災害に匹敵する人災』とは・・・その、比喩ではないのですね?」
「ああ。どうせ後ほどわかるだろうよ。だがこちらに飛ばされた俺は非常に遺憾ながら他人事では済ませられん。靱葛と貴様諸共巻き込まれることは必至。リーブ、貴様も覚悟を決めておけ。・・・まあ貴様は今更かもしれんがな」

何故かうんざりとしたハンスは、それでもこの世界を見捨てる気などさらさらないのだ。ハンスは人一倍お人好しだから。
私は期待に添えられるように微笑む。

「もしこの世界に未曽有の大災害が起こる可能性があるなら・・・。防いでみせましょう、今度こそ皆さんと共に」

fin.