筆頭ハンター1

遺跡平原。
ケット・シーは採取クエストをこなしていた。
木々の下に蜂の巣を見つけ、せっせと蜂蜜を収集する。
そんな彼の隣でコンビである赤毛の獣・・・ナナキは猫のように丸まっていた。

「ねえ、そろそろ集まったー?」
「んー。そやな。そろそろボクが持てる限界になりそうやな・・・」
「おいらも持った方がいい?」
「ほな、3つほど壷預かってくれへんかー?」
「いいよ。首回りに吊り下げて?」
「・・これで構へんか?」
「うん、大丈夫!」

えへん、と自慢げなナナキに
おおきに、とケット・シーも笑う。
序でにううん、と大きく伸びをして周囲を見渡す。
草原が広がり、まったりと草食モンスターが通り過ぎていく。
穏やかな青空に鮮やかな鳥達が飛び去っていった。

「・・・ここは平和やなあ・・・」
「討伐クエストがなければね」
「そうやなあ・・・」

いささかスローテンポの会話をしていた2匹だったが、
不意にナナキが起きあがった。

「ナナキはん?」
「ケット、あの気球・・・こっちに来てない?」
「・・・ほんまや。なんやろ?」

クエストに現れる気球。
それは王立書士隊が使用しており、
特に討伐クエストでは各ハンターがどれだけクエストに貢献したのかを監視・記録し、報酬を計算するという役目を果たしている。
よって、クエスト中にハンターたちの前に降りてくることはまずあり得ない。
しかし、蒼穹の空に天高く浮いていた気球は、彼らの前にゆっくりと降りてくる。
中から身軽に飛び降りたのは、王立書士隊の一人、シェルクだった。

「シェルクはん?」
「どうしたの?」

小柄だが勇ましい少女は、凛とした表情でケット・シーを見据えた。

「ケット・シー。今すぐ街へ戻ってください。あなたの力が必要です」

*   *

大老殿。
戦闘街ドンドルマの中央広間から伸びる階段の先にある、
選ばれしハンターのみが入室を許可される特別な集会所である。

ナナキを伴ってケット・シーが大老殿へ入れば、
バレットがテーブルから巨大な腕を振ってこちらを呼んでいた。

「久しぶりだな、ケット、ナナキ!」
「バレットはん、お久しゅうー」
「久しぶりだねー」

彼に倣ってテーブルにつく。
ナナキは座れないので、ケット・シーの足下に伏せた。

「おめえら、またコンビでクエストか?」

隣から豪快にジョッキを煽っているのはシドだった。
辛うじて中身は酒ではなかったが。

「そや。ボクら遺跡平原で採取クエストしてたんや」
「何採集してたのー?」

ひょい、とバレットの向かいから顔を覗かせたユフィに、
ピースサインで答えた。

「特産キノコや!!!」
「・・・それってクエストレベル1じゃん」
「と見せかけて、蜂蜜補充しとったんやけど」
「あー。確かに蜂蜜ってすぐなくなるもんねー」

うんうん、と腕を組んでユフィは納得したらしい。

「シドはんとバレットはんもコンビ組んどるんやろ?」
「おう」
「結構有名になったんだぜ!」
「・・・でも、『へべれけハンターコンビ』とかいわれてなかったけー?」

けけけ、とからかうようなユフィにバレットがぶん、と大きな腕を振るった。

「うっせいぞユフィ!」
「おめえこそ、どうせ持ち物盗んではハンター達に警戒されてんだろ?」
「違うって!あたしはただ、この身軽さを生かして
たっかいところにある素材をゲットして、有効活用してるだけじゃん!」
「あーそれ、戦闘放棄して探しに行ってるだろ」
「放棄じゃないし!ちゃんとサポートもしてるって!」

ユフィがテーブルから身を乗り出して抗議していると、
入り口から金髪と黒髪の男女二人組のハンターがやってきた。

「お待たせー!」
「待たせたな」
「ティファとクラウドだ!わーい!!!」
「ティファはん、クラウドはんお久しゅうー」

神聖な炎が灯るしっぽを振り振り、大喜びのナナキと
デフォルトの笑顔全開のケット・シーに、ティファも自然な笑顔になった。
余り表情の変わらないクラウドも小さく笑みを浮かべている。

「ケット・シーにナナキも!みんな集まってきたわね」

テーブルに着くティファ。その隣は勿論クラウドが座った。
ティファの背負う大きな武器に、ユフィが気付いた。

「あれ?ティファのそれって・・・」
「あ。可愛いでしょ?ボルトマルクっていうの」
「へえーっ。うん、碇マークがお洒落じゃん!」

彼女が背負っていたのは大きなハンマーだが、
海をイメージした碇マークと縄で可愛らしくデザインされていた。
が、ちょっとげんなりしたクラウドが口を挟む。

「・・・それだけじゃない」
「クラウド?」
「攻撃力が恐ろしい」
「へ?そうなの?」
「え、でもハンマーだしこのくらいでしょ?」
「このくらいって・・・?」

若干引き気味のユフィに、ティファは小首を傾げて事もなげに答えた。

「1456だけど」
「「「1456ーーーーー!!??」」」

その場のほぼ全員が叫んだ。

「や、やばっ!」
「ハンマー振り回しに巻き込まれたら、一発でアウトじゃねえか!」

バレットがうげっと言いたげな表情で指摘すれば、ティファが否定した。

「失礼ね!クラウドはそんな間抜けなことしないわよ!」
「・・・俺が最前線に出たいんだが・・・」
「何か言った?」
「・・・。いや」

視線に制され、クラウドは重いため息をつく。
その隣に座っていたシドがにやっと笑った。

「くくっ。姫さん守れねえってのも大変だな、クラウド」
「・・・シド。後で覚えてろ」
「へいへい」

「ねえねえ!!あたしの新しい弓も見てよーー!!!」

じゃーん!!と効果音付きでユフィが背中の弓を取り出した、のだが。
妖しく炎のように揺らめく弓に一同はちょっと困惑気味になった。
代表してシドがさくっとコメントをいれる。

「なんでい、その不気味な弓」
「不気味って何さ!これ、魔神召還の秘術が宿ると伝わる禁断の魔法具なんだよ!!!」
「余計駄目じゃねえか」

ふん、と興味を無くしたようにシドは軽くあしらう。
ユフィはすかさずシドの武器を指さした。

「シドのつまんない槍よりよっぽどいいじゃん!」
「はあ!?つまんねえーだとおい」

ばん、とユフィにつられてシドもまた武器をテーブルに載せた。
シドの武器は、かつて鉱石の採掘に使われたというドリルな槍。
回転で放電現象が可能らしい。
今度はユフィがさらりと纏めた。

「だって単なるドリルじゃん」
「このドリルがいいんじゃねえか!!
で、ケット・シーは・・・相変わらずそれか?」

ユフィからケット・シーに話題をコロッと変えたシドは
彼の持つ武器に拍子抜けしたらしい。
片手剣、ねこ?ぱんちと呼ばれるそれは、その名の通り猫の手にしか見えない。

「これが一番使い易いんや!!」
「猫が猫パンチ使ってんのか?」
「なんやシドはん」
「おめえのHRなら、もっとごつい片手剣作れるだろ?」
「そやけど、うちはナナキはんの攻撃力がどでかいし、
ボクはサポートで十分なんや。麻痺できるさかい」

えっへん、とケット・シーが自慢すれば
ナナキが照れたようにごろごろと喉を鳴らした。

「ケット・シーが閃光玉とか痺れ罠とか使ってモンスターを誘導してくれるから、おいらすっごく楽なんだー」

そんな二人(二匹?)に、ティファは微笑む。

「ふふ。二人ともこんなに可愛いのに、最強コンビね!」

「あ。ごめんね?私が最後かな?」

突如割り込んだ声に、全員が入り口を振り返る。
遠慮がちに入ってきたのは、茶色の長い髪を三つ編みにした女性だった。

「「「エアリスー!!!」」」
「大丈夫。まだヴィンセントが来てないわ」

ぱちんとウインクを決めたティファが軽く返し、
エアリスがじゃあセーフだね!と笑いあう。
仲間の武器を逐一チェックしているユフィが、エアリスの武器を覗き込んだ。

ピンクの柄に黄色の珠、ハートの飾られた可愛らしい笛。

「エアリスは・・・あのときと同じ狩猟笛なんだね」
「うん・・・。ちょっとね」

えへ、と言いながらも何処か寂しげな笑顔。
ユフィが素直に謝った。

「あ・・・。うん、ごめん」

しんみりした雰囲気に、バレットがだはあ、と大きなため息をついた。

「エアリスみたいないい女を待たすなんて、あいつ、伝説のハンターの名が廃るよな」
「ねー。クラウドの幼馴染なんでしょ?ちょっと居場所とかわかんないの?」

ユフィの追及に、問われたクラウドは困り果てた。

「それが・・・。あいつ、行動範囲が広すぎて・・・」
「役に立たないなあ、もう!!!」
「・・・」

返す言葉もないクラウド。
仲間たちの気遣うような視線に、エアリスが柔らかく微笑んだ。

「いいの。私、待ってるから!」
「くっ。相変わらず健気だよなあ、嬢ちゃんは」

エアリスの後ろから、音もなく長身のハンターが入ってきた。
クラウドがため息交じりにその名を呼ぶ。

「ヴィンセント。やっと来たか」
「おっそいーー!!!」

憤慨したユフィをさらっと無視し、ヴィンセントは壁際に立つ。
そのヴィンセント背負う武器にシドが目敏く気付いた。

「ん?ヴィン、おめえの武器、こんなんだったか?」
「・・・討伐依頼を受けた報酬の素材で作っただけだ」

銃身は鈍くエメラルドにたゆとう。
不思議な金属で作られ、謎の紋章がかかれたライトボウガンだった。
ティファがうっとりと頬杖をつく。

「綺麗な銃身ね・・・」
「ライトボウガンのアームキャノンっつったっけ?」
「ってえ、これレア度たっけえな!」

バレットがそのレア度に驚いていると、
入り口の反対側からゆったりとした歩みで一人の男性が近づいてきた。

「・・・全員、揃いましたね」

にっこりと食えない笑みを浮かべる男に、ハンターたちがその名を呼ぶ。

「「「リーブ!!!」」」
「おめえ、町長のくせにこっち来ていいのかよ」

多少呆れたように突込みを入れるシドだが、リーブの笑みは変わらなかった。

「ええ。今回のクエスト概要は、直接みなさんにお伝えした方がいいかと思いまして」
「そんなにやばいのー?」
「ええ。下手をすれば、ドンドルマが壊滅します」
「壊滅・・・!!?」
「さ、さらっと言うなよ」
「勿論、最悪の場合、ですが」
「・・・どういうことだ」

壁に寄り掛かっていたヴィンセントが薄く目を開く。
リーブは表情を改めて、語りだす。

「・・・先日、みなさんにお話しした火薬消失の事件は、覚えてらっしゃいますか?」
「ああ。あれか」

クラウドが軽く頷く。

各拠点にはモンスター退治のため、火薬や砲弾、ボウガンなど
耐モンスター設備を有しているところが大半である。
しかし、ここドンドルマから西北の拠点で、その火薬が一晩のうちに跡形もなく消えるという事件が続発していた。
目撃情報はただ、「蠢く黒い山をみた」とだけ。

「誰が盗んでいるのか分かったの?」

ティファの問いかけに、リーブが軽く肩を竦めた。

「ええ・・・。いえ、恐らく、ですが。
盗んだ犯人こそ、今回討伐をお願いしたいモンスターです」
「えっ!?」
「モンスターが火薬を盗むやて?
まさか、攻撃される前に先手をうったんか?」

ケット・シーがむう、と腕組みをして唸る。
普通、モンスターにそこまでの知性はない筈だが、
先手を打てるならば、かなり厄介な相手ということになる。
だが、リーブは首を振るった。

「いえ・・・。そうではなく・・・」
「勿体ぶるなよ!」

バレットがどん、と苛立ちテーブルを拳で叩く。
対照的に落ち着き払ったもう一人のガンナーが答えた。

「・・・モンスター自体の好物か」
「「「え!?」」」

ヴィンセントの視線に、リーブは苦笑しながらやっと頷いた。

「・・・その通りです。ヴィンセント」
「火薬食べるの!?」

信じらんない!と叫ぶユフィ。
リーブは重々しく続けた。

「そうとしか考えられないのです。
大量の火薬です。
人が盗むにしては逃走ルートと思しき道に全く痕跡がないですし、
ボウガンや砲弾には一切手がつけられていない・・・」
「・・・あ。それって・・・」
「ボウガンは食べられなかったんだね?」

ティファの言葉の続きをナナキが補う。

「ええ」
「・・・しっかしよう、火薬がメシなんざ、
随分捻くれた野郎じゃねえか。一体何もんだ?」

シドが軽くぎい、と椅子を揺らした。

「このモンスターですが・・・古文書に書かれている
伝説の古龍である可能性が高いです」
「伝説って・・・!まさか祖龍!?」
「・・・いえ。
・・・巨戟龍《ゴグマジオス》。
火薬を好む以外は・・・具体的な生態は分かっていません」
「げ」
「マジかよ」

バレット、シドの二人が揃って渋い顔に変わる。
残りのメンバーも今回のクエストの難易度を悟ったらしい。
彼らの緊張を和らげるように、リーブは微笑む。

「・・・皆さんだけでモンスターを討伐しろ、ということではありません。
未知のモンスターであれ、ここは戦闘街・ドンドルマです。
こういうときのために備えてきたのですから」
「つまり、巨龍砲が完成したっちゅーことやな?」

ケット・シーの言葉に、リーブが力強く頷く。

「はい。シャルア所長やほかの皆さんの協力の御蔭で、
十分な威力を持つ巨龍砲が完成しました。
但し、多少エネルギー充填に時間がかかる・・・。
我々はこれより巨龍砲の準備に取りかかります。
皆さんは準備が終わるまでの時間稼ぎをお願いします」
「おっし!」
「任せといて!!」

「よっしゃ。んじゃクエスト発注するで」

一同を代表して、ケット・シーがクエスト発注のカウンターへ向かい、
受付嬢からクエストの詳細を受け取り、読み上げる。

「えー・・・緊急クエスト『高難度:沈め掻臥せ戦禍の沼に』
クエストレベルは・・・うわ、G★3や」
「えっー!!!集会所クエスト最高レベルじゃん!!報酬金は!?」

ユフィはテーブルから乗り出す。
振り返り、ケット・シーはにやっと笑った。

「さっすがユフィはんやな。・・・35400zや」
「よおっし、やるぞー!!!」
「ユフィらしいわね」
「まあ、やる気あるならいいんじゃねえか?」

拳を上げるユフィに、仲間たちから笑いが上がった。

「じゃあ、ちゃんと食事しなきゃね?」
「よっ!!!屋台セブンスヘブンの料理長!!」
「待ってたぜ!!!」

すっくと立ち上がったティファに、
へべれけハンターコンビ、もといシドとバレットが喝采を送る。

「よっしゃ、ボクが高級食事券で奢るわ」
「ありがとう!ケット・シー」
「ごちになるぜ!」
「よしよし、今日のおみやは・・・」
「いやいや、番組違うだろ」
「そもそもまだ狩りにいってねえよ」
「今日のお勧めはピンクキャビアとマスターベーグルよ」
「お。ネコの防御力【大】じゃねえか」
「ふふふ、ちょっと待っててね」

大老殿を出たティファが、
暫しのちに大量の食事を乗せたトレイを持って戻ってきた。
料理の香ばしい香りに、仲間が思わず立ち上がる。

「お待ちどうさま!」
「「「いっただっきまーす!!!!」」」

テーブルに集った仲間が一斉に手を合わせ、猛烈な勢いでがっつきだす。

「あー!!!それあたしのー!!!」
「おめえ、俺様の肉取っただろうが!」
「シドはあたしのチャーハン食べたじゃん!」
「ティファの食事は最高だな!」
「ありがとう、バレット」
「ねえ、おいらの肉知らない?」
「あーナナキはんの分、これやな」
「ユフィ、そんなに急いで食べたら噎せちゃうわよ?
それからクラウド、苦手だからって野菜残さないで!」
「・・・あ、ああ」
「ヴィンちゃん、もうちょっと美味しそうに食べなよ!」
「・・・そうか?」
「無表情すぎるってば!!!」
「あ、これ美味しい!」
「それ、ちょっとアレンジしてみたんだけど」
「後でレシピ教えて?」
「ええ、勿論!」

大量の食事を騒々しくもあっという間に平らげていく仲間たち。
テーブルの後ろで見守っていたリーブがくすりと笑った。

「楽しそうですねえ」
「リーブの分も作ったんだから、食べてね?」
「ありがとうございます、ティファさん」

食べ終わった仲間たちの身体が、緑色の光に覆われた。

「ネコの防御力【大】発動!」
「よっしゃ、これでオッケー!」

食事を終えた彼らの前に、白衣の女性が声をかけた。

「・・・行くのか」
「シャルアさん!」
「あたしも行きたいところだが・・・」

悔しそうなシャルアは、狂竜ウイルス研究所所長であると同時に
つい最近ハンターになったばかり。
ティファがぱちんとウインクを決めた。

「大丈夫!私たちに任せて?」
「シャルアはんのHR1ではどっちにしろ前線は無理やで」

からかうようなケット・シーに、シャルアはじろりと睨みつける。

「オトモのくせに生意気な」
「だからボクは正式なハンターやて!!」
「オトモ?ケット・シーが?」

追及したそうな仲間たちへとケット・シーは軽く手を振った。

「あー・・・。そこは聞かんといてー」

明後日の方向を向いたケット・シー。
シャルアはふう、とため息をつく。

「これを持って行け。サラ」
「はい!」

売り子のサラがテーブルに並べていく。
回復薬グレート、鬼人薬グレートから硬化薬グレート,秘薬など。
戦闘中に体力やスタミナを回復し、攻撃力や防御力を上げてくれる便利アイテムばかりだ。

「ありがとう!流石シャルアね!助かるわ!」

各々がアイテムをポーチに詰めていると、入り口から屈強な男が入ってきた。

「よっ!どうも最強ハンターさん方」
「レギオン!」
「あんたも参加するのか」

クラウドの簡潔な問いに、レギオンは困ったように笑った。

「いやー。俺は本業がありますんで」
「レギオンも大変だねー。おっちゃんの護衛でしょ?」
「護衛ではありませんよ?」

ユフィがテーブルに頬杖をついて、ちらと背後のリーブを伺えば、
リーブはにっこり笑って速攻で否定した。
レギオンは相変わらずな護衛対象にだはあ、と大きなため息をついた。

「だーかーらー。護衛ですって。
ほんと大変ですよー。
俺、護衛の筈のなのに、今回も護衛以外の任務ばっかりで・・・」
「護衛以外って?」

ナナキきょとんと首を捻った。

「えっと。街の人の避難誘導、ボウガンと砲丸補充、兵站の確保、城門の開閉・・・」
「うわあ相変わらず雑用・・・」
「・・・はっきり言わないでくださいよ、ユフィさん。
ともあれ、俺はリーブ町長のサポートして一刻も早く巨龍砲が使えるようにしますんで、
時間稼ぎ、よろしくお願いします!!!」
「「「任せといて!!!」」」

クエスト掲示板から参加表明をした仲間がクエスト入口へと移動していく。
最後にクエストを発注したケット・シーが入り口へ向かい、
見送るリーブ達へくるりと振り返る。

「んじゃ、行ってくるで!」

ねこ?ぱんちを持った右手を挙げれば、
仲間たちもそれに続く。

「うおおおおおおお!!!」
「よっしゃ、俺様も暴れるか!」
「ま、このユフィちゃんがでるんだからすぐに終わるって!」

バレット、シド、ユフィは力強く応え、

「リーブ、巨龍砲を頼む」
「はい。分かっていますよ」
「リーブも気を付けて!」
「ええ、ありがとうございます」
「レギオン、リーブの護衛よろしくね?」
「分かってますって!」
「あの、護衛ではないですから」
「往生際が悪いな」
「ちょっと割り込まないでください、シャルアさん」
「・・・補充は」
「レギオン達に依頼していますから、大丈夫ですよ」
「そうか」

クラウド、ティファ、エアリス、ヴィンセントはリーブ達と出立前の挨拶を交わす。
(シャルアが少し割り込むが)

「ってヴィンちゃんも右手挙げてよ!!!」
「・・・」
「無視かよ!!」
「・・・ま、ほないくでー」

ハンターたちの姿が入り口の奥へと消えていく。
残されたリーブは部下たちへ指示を飛ばす。

「では、こちらも急ぎましょうか。レギオン」
「了解!!!」
「町長!街の人たちの避難は完了しました!!」
「ありがとうございます。では皆さん!
ここが街の最終防衛ラインです。頑張りましょう!」
「「「おおーっ!!」」」

部下たちの勇ましい声。
そして、法螺貝の合図が鳴り響く。
・・・クエストの開始である。