筆頭ハンター6

クエスト成功のテーマが高らかに響く。
広場でユフィがこみ上げる喜びと共に飛び跳ねた。

「勝ったーーー!!!!」
「そこは『狩った』、じゃねえか?」
「えー!?どっちでもいいじゃん、バレット!」

軽くバレットを小突くユフィの隣では、
ケット・シーが倒れたゴグマジオスをしみじみと見下ろしていた。
その傍で尻尾を振るのはパートナーのナナキである。

「いやー大変やったわ、ほんまに」
「ケット、お手柄だね!」
「いやいやナナキはんの乗りも見事やったし、みんなの力やで」

倒れた巨体を挟んで向かい側にいたティファは、
興奮のあまりうっかりクラウドに思わず抱きついていた。
どぎまぎしたまま為すがまま動けないクラウド。

「クラウド、やったわ!!!」
「あ、ああ・・・」

その後ろでは、シドがふうーっと何処からか取り出した煙草で一服をしていた。
更に後ろでじっと動かないヴィンセントを振り返る。

「何とか終わったようだぜ?」
「・・・ああ」
「あいっかわらずクールっつーかよお、もうちょっと感想はねえのかよ?」
「任務完了だ」
「いや、そうじゃねえ・・・」

そんな彼らを笑顔で見下ろしているのは、南壁で最後まで全員の補助をしていたエアリスである。
傍に立って・・・いるのではなく、エアリスへ土下座しているのは遅れてきたザックスだったりする。

「みんな、お疲れさま!」
「・・・なあ、エアリス?」
「なあに?」
「俺、あとどんだけ土下座したら許してもらえそう?」
「え?一生かな?」
「一生ーーー!???」

偉業を成し遂げたハンター達がわいわい騒ぎながら互いの健闘を称えていたところで
彼らにクエストを依頼した人物が現れた。

「皆さん、お疲れ様です。
これでドンドルマの街も近隣の住民も皆救われました。
本当にありがとうございました」
「「「リーブ!!!」」」

深々と頭を下げたリーブの後ろにはレギオンと
彼らを迎えに行っていたシェルクが控えていた。
リーブは顔を上げ、楽しそうに続けた。

「では、皆さん。恒例のものを始めちゃってください」
「リーブ、恒例って?」
「素材の剥ぎ取りですよ」
「「「ああ!!!」」」
「うっかり忘れてたぜ」
「よおっし!レア素材ゲットしてやるーーー!!!」

広場に集まったハンター達が
一斉にゴグマジオスの素材の剥ぎ取りに勤しむ。

「・・・ん?」

頭部を中心に剥ぎ取っていたケット・シーが、妙に丸い感触に不思議に思い、素材を取り出す。
手の中にあったのは、紅く揺らめく光を放つ珠。
『戦火の龍神玉』だった。

「何それーーー!!!あたしも欲しい!てか頂戴!!」
「いくらユフィはんでも、これはあげられへんなあー」
「きいーー!!!あたしも剥ぎ取るー!!!」
「・・・まあ、でねーだろうけどよ」
「シドはん、どういうことや?」
「それ、かなりのレアだろ?それが一個でたってことはもうでねえんじゃねえか?」
「うーん。まあユフィはんの運次第やな」

結局ユフィは戦火の龍神玉を剥ぎ取れず、がっかりしたところで全員の剥ぎ取りが完了した。
リーブが皆の様子を確認して、一つ頷く。

「みなさん剥ぎ取りは完了したようですね。
それでは、・・・英雄たちの凱旋に移りますよ?」
「凱旋・・・?」

リーブに先導されハンター達が隣のエリアへ移動すると、華やかに飾り付けられた荷台が数台止められていた。
それに乗り込んで戦闘街を抜ければ、街道を挟んだ両側に街の全ての住民たちが並び、盛大な拍手と歓声が出迎えた。

「おい、英雄たちが来たぜ!!!」
「なんて凛々しいのかしら・・・!!」
「おっそろしいモンスターだったんだろ?いやー凄いハンターがいたもんだ!」
「筆頭はあのケット・シーでしょう?流石だわーー!!!」
「ねえねえ!こっち向いてよーー!!!」
「英雄、ばんざーい!!!」
「「「万歳!!!」」」

色とりどりの紙吹雪が舞い、人々は戦勝ムードの熱気に酔いしれる。
荷台に乗ったまま住民の賞賛の嵐に晒され、ケット・シーは若干圧倒されていた。

「な、なんやえらい出迎えやな・・・」
「それだけの快挙を成し遂げたということですよ、ケット」
「リーブはん」

荷台の隣に歩み寄ってきた町長は、にっこりと笑った。

「ありがとうございます。ケット・シー。
あなたがいなければこの街も壊滅していたことでしょう」
「いやいや、それほどでも」

照れつつも、わはははははとふんぞり返って笑うと、ケット・シーはうっかり後ろにひっくり返った。
頭が床に落ちたと思って慌てて飛び起きると・・・
そこはドンドルマの街ではなく、いつものWROの局長室だった。

*   *

「起きたようですね、ケット・シー」
「・・・リーブはん」

穏やかな声に振り返れば、主がいつも通り執務机に座っていた。
ケット・シーは記憶を辿る。
ドンドルマでのハンター、ではなくリーブの分身として今日はメンテナンスに訪れていたのだ。
そのスリープモードのまま、夢を見ていたのだと。
主はくすりと笑った。

「随分楽しそうに眠っていましたが、どんな夢を見ていたのですか?」
「それは・・・」

口に出そうとして、ケット・シーはふと考え込む。
ゴグマジオスと仲間全員・・・そう、今はもういないエアリスやザックスを含めて・・・戦い、
勝利を収めて英雄と称えられた夢。
しかし、まあどう考えても自分のちっぽけな戦闘力で『英雄』だなんて恥ずかしくて言えそうもなかった。
ふるふると首を振るう。

「・・・いんや、何でもあらへん」
「そうですか。ですが、ケット・シー・・・」

リーブはふっと優しい声で告げた。

「あなたも間違いなくこの星を救った『英雄』の一人なんですからね。それはお忘れなく」

fin.

※ 震撃の古龍
進撃の巨人→震撃の血槌→震撃の古龍。
1番目は人を食べる巨人が襲ってくる漫画の題名。
2番目は異界と現世が交わる街にて、恋する怪人が巨大なモンスタートラックに乗って恋人を奪いにくる、とある秘密結社の話の一つ。因みに怪人アリギュラは、捕虜に拷問という名の恋バナを延々としてくれるという。