KP

※FGOイベント「深海電脳楽土 SE.RA.PH」で、黒幕を倒す作戦会議中。黒幕についてはネタバレですのでご注意。序でにやっぱり公式ではないのでご注意。

 

キアラ戦に文字通り惨敗した私たちは、BBと呼ばれる上級AIの協力により時間を巻戻して、夕暮れの木造の教室に飛ばされていた。BBは教壇に立ち、我々は生徒のように席についている・・・が、その表情は皆暗かった。

このままでは彼女に勝てない。

そんな我々の懸念を払拭してくれたのは、BBが用意してくれたアイテムであった。何でも万能のキアラの能力をそれぞれ封じることが出来るらしい。但し、アイテムを手に入れるためにKPと言われるポイントを集めて購入して下さいねーと軽く言われてしまったが。勿論このポイントを集めるためにはSE.RA.PH内に闊歩する強力なモンスターやサーヴァントを倒すしかない。

私はすっと手を挙げた。

「ちょっと待ってください」
「何ですか?質問ですか、巻き込まれただけの村人A風情」
「そこは町人Rでお願いします」

空かさず訂正を入れれば、何故か異界のマスターとハンスがこそこそと話し込んでいた。

「それでいいんだ」
「相変わらず無駄な拘りだなマスター」

こほん、とBBが教師のように咳払い。両手を腰に当てた彼女は、迎え撃つように不敵な笑みを浮かべた。

「いいでしょう。それで・・・町人Rは後輩力溢れるヒロインのこのBBちゃんに何か質問でも?」
「ええ。KPを集めるに当たって・・・ですが。これほどのKPが必要になるとしても、このラインナップでは心許ないのです」

教壇に立つBBの眉がきゅっと危険な角度に変わる。

「むっ!このBBちゃんが丹誠込めたアイテムでも不足だと言うんですか!」
「紹介いただいたアイテムは全てキアラさんの能力を封じるもの。こちらの能力を伸ばすなり、新たなスキルを発動するものではありません」

きっぱりと断言すれば、教室が騒めいた。そういえば、そうよね?えーBBちゃんそりゃーないぜー。などとサーヴァントからの同意やら抗議やらが上がる。BBが芝居がかったようによろめいた。

「うっ。町人Rのくせに痛いとこつくんですね。生意気です」
「そこで、もう一つ作っていただきたい」
「えー??たった今弱弱なマスターさんたちを助けたヒロインたる私に時間外労働ですかー?もう時間がないことはお伝えしましたよね?軽すぎる頭にちゃんと入ってます???」
「といっても、我々がKPを集めてBBさんにお渡しするまで、時間がかかりますよね?」

といっても集められるのは戦闘ができる靱葛のサーヴァントとそのマスターであって自分ではないのだが。
一応仲間に入れてもらっているのと交渉中なのでそこは伏せておく。

「うっ!」
「我がマスターながらえげつないな」

ふふん、とハンスが皮肉気に笑う。頬杖突いた彼はいつもの調子を取り戻したようだ。いい傾向である。
そんなハンスと私を忌々しく見た彼女は、ふん、と鼻を鳴らした。

「・・いいでしょう。町人Rごときになめられたようでは、正しいラスボス系後輩としてメンツが立ちません。その挑戦、受けて立ちます!さあどんなスキルがいってごらんなさい!」
「はい。ではキアラ戦で、ハンスのスキルをどんなものでもひとつ発動可能とする・・・はどうでしょう?」
「何でもお!?ちょっと要求仕様が高過ぎじゃないですかあ!?」

だん、と彼女が床を踏み鳴らす。私はちょっとばかり首を傾げた。心底不思議そうに聞こえるように。

「まさか・・・出来ないのですか?」
「むっ!出来ますよ、出来ますとも!!!まあアンデルセンのスキルならキアラも使ってくるでしょうし・・・。いいでしょう。何でも一つ。KPは500。ええいBBちゃんの出血大サービス!こんなに人類に肩入れするのは、今回が非常事態だからですよ!!」
「ありがとうございます」

にっこりと笑みで返せば、ふん、とあっちを向かれてしまった。

「ありがとう、BBちゃん!ありがとう、リーブさん!!!」

隣にいた靱葛にきゃっきゃっと嬉しそうに微笑まれ、私も自然な笑みを返す。
そんなほのぼのとした私たちに水を差すように、BBがびしいっと指を指す。

「ただし!買えるのは、全てのアイテムを購入した後!ですからね!」
「え、それは・・・」

思わぬ条件に怯む私に、靱葛が横から力強く頷く。

「いいよ!それでいいから!ありがとう!」

fin.