37.守る

守るっていうのは、いろんな理由があると俺は思う。
対象が弱いってのが、よくある大きな理由の一つ。

だけどまあ、それは俺の護衛対象に当てはまるところもあり、だけど決定的な理由じゃない、と思う。

確かにあいつは俺みたいに単身の戦闘が得意なわけじゃないけれど、決して戦えない訳じゃない。
寧ろ、あいつが先頭に立ってWROの治安部隊を率いたら
緻密な戦略で最小限の犠牲で事を治める。
いや、その犠牲も、出きればないようにと心を砕く。
そうなったときのあいつは最強だ。
余程のことがない限りあいつを止めることは出来ないし、
あいつに任せるのがWROとしても最適だし、
そのときのWROがそれこそ最強だ。

だけどまあ、俺が守るに値するとする理由じゃない。

多分それは、俺と同じくうっかりWROに居着いてしまった科学部門統括と同じ理由。

弱いから守るんじゃない。
居て貰わないと困るから、
俺たちにとって必要不可欠な奴だから、守る。

必要な理由は
局長だからとか統率力とか指導力とかそういう
堅苦しいことも入っては居るけれど。

あいつがいると、安心する。

俺みたいな化け物でも、嘗て命を狙ったやつでも、
はっきりと敵対した奴らでも、
そんな事情も全て見透かしているだろうに
それでもあっさりと受け入れてしまう。

極普通の奴も、つまはじきにされがちの異分子となる俺たちも、分け隔てなく居場所を作ってしまえる奴。

そんな稀有なやつは、あいつしかいない。

今日もあいつは食えない笑みで
周りを派手に巻き込んでいたけれど、
それで俺はまたしてもこき使われているけれど。

あいつの最終目的は
いつも誰かを助けること、笑顔にすることだから。

あいつにいつものように盛大に文句をいってやりながら、それでもしゃーないな、と笑う。
俺みたいな異分子も、普通なやつもみんなあいつのペースに飲まれて
気がついたらひとつになって動くことができる。

なんて奴だ。
あ。今日は科学部門統括も巻き込まれてる。

彼女は昔、あいつの命を狙っていたから
俺は何度も彼女と対決した。
仮にも元ソルジャーだから負けはしない。
何度も彼女を組織から外すことを提案したけど
あいつはただ静かに笑って首を振るだけだった。

そのころから彼女はあいつに堂々と乗り込んでいたものだから、今日も堂々と文句を言っているけれど。
多分、無理だろうな。

何かポジティブなことを企んだあいつは
誰も止められないから。

ああほら、やっぱり彼女が憮然とした表情で部屋を出てきた。まだ口元は文句をいいたげだけど、大きくため息をついて諦めたらしい。

「あんたはよくつき合えるな」
「そりゃあ、シャルア統括も同じですよ」
「・・・全くだ」

そして俺たちは顔を見合わせて、笑った。

fin.