41.異能

異能。
通常ではあり得ないことを引き起こすことのできる能力。

平凡でただのサラリーマンだった自分には一生縁のない話の筈だった。
そもそも、一般の戦闘員が使える魔法すら、全く使えなかったのだから。

しかし。

「・・・どうしてケット・シーになったんでしょうねえ・・・?」

引き取った廃棄予定の遊戯ロボットが
いつの間にか動き出した。
そうして勝手に意志を持った彼は、好き勝手に喋り、どんなに離れても自分に情報を伝え続けた。
それに目を付けたルーファウスによってクラウド達のスパイになり。
仮初めの仲間達に魔法を習い。
そして、いつの間にか自分の行いに疑問を持ち。
会社を裏切って、情報を流して。
昔の自分なら考えられないようなことを、
忘れかけていた何かに突き動かされて進んだ。

そして、会社を裏切った自分は
会社と共に消えるものだと思っていたのだが。

「どうして・・・こうなったんでしょうねえ・・・?」

成り行きとは全く持って恐ろしい。
裏切り者として消える前に、
自分が創った都市から住民を避難させる手伝いをしていただけ。
しかし消える暇もなくあれよあれよと流されて
気が付けばWROの責任者をしている。

「何の話だ?」
「ええっと・・・ケット・シーの話ですよ」
「ああ、それなら簡単だ」
「へ?」

答えなどないと軽く振ったのに、
彼女は事も無げに言い切った。

「あ、あの?ケット・シーのことですよ?」
「ああ、そう聞こえたが」
「何が・・・簡単なんでしょうか?」

彼女は呆れたように答えた。

「あんたの心そのものじゃないか」
「・・・はい?」

彼女の答えは、理解できそうもなかった。

fin.