42.卵

※「科学者ハンター」の設定です。

拠点であるバルバレ。
そこで武具屋を営んでいる主人に声をかければ、彼はにんまりと笑って
クエストを依頼してきた。

「例のモノを納品してくれたら、
アンタを、アレに推薦してやるぜ。
どうだ、悪い話じゃねえだろう…?」
「・・・例のもの、だと?」

シャルアが眉を寄せようが、主人はお構いなしだ。

「シラバッくれんなよ、分かってんだろう…?
そう、卵だよ、卵!
卵の納品だ!」
「・・・たまご?」

はあ?と呆れたシャルアの足元で、ケット・シーがぽんと手を叩いた。

「あーありましたな。
あらゆるモンスターの卵を搬送するんや。
確か卵好きの長がだいちょ・・・むぎゅ」
「駄目駄目!君は今回オトモアイルーだろ?
先のこと喋っちゃ、」
「ボクは一流のハンターや!!!」

秘密をばらそうとするケット・シーを武具屋の主人が急いで口を塞ぐ。
途中で口を塞がれたケット・シーが憤慨し、びしいっとハンターを主張していた。
が、そんな二人をさっくりと無視して、シャルアが呟く。

「・・・嫌だ」
「「は?」」

腕を組んだシャルアは、きっぱり宣言した。

「卵を運搬だと?
卵は運搬するものじゃない。食べるものだろ」
「・・・あー。まあ、そうやけど」

ケット・シーがぽりぽりと頬をかいて同意するが、
武具屋の主人は力いっぱい否定した。

「違う!!!あのつるっとした丸い壊れやすい子を
迫り来るモンスターをかわしながら無事に回収ボックスに入れたときの
達・成・感・・・!!!」

一人盛り上がる主人だが、シャルアは淡々と返す。

「いや。卵は即座に茹でるに限る」
「焼いても美味しいけど?」
「駄目だ。焼くと黒こげだ」
「・・・いや、それは、シャルアはんが・・・」
「何だ?」
「な、何でもあらへん!!!」
「そうか」
「「・・・」」

妙な間が空いた。

「ま、まあ、卵の料理は兎も角、
新人ハンターのクエストとしては結構ええと思うで?」
「本当か?」
「ほんまや。な、ご主人はん?」
「その通り!」

彼らを胡散臭そうに見ていたシャルアだったが、
自分が新人ハンターであることは間違いなかった。
ふん、と鼻を鳴らす。

「まあ、気が向いたら受けてやる」
「・・・頑固やなあ」

fin.