49.貴方のための物語2

※もしもリーブさんがハンスを召喚していたら。の続き。会話文だけです。

「ハンス」
「なんだマスター。貴様の予定は時計の長針どころか秒針にまで切り刻まれているのだろう、俺なんぞ構う暇があるものか」
「まあそれは置いておいて、ですね。
ハンスの宝具は『貴方のための物語』、なんですよね?」
「宝具名ではないが、まあ必殺技だとでも思っておけ。ああ知っての通り俺の宝具には戦闘能力は皆無、しかる故に必殺どころか蚤一匹すら殺せまいがな!!!」
「・・・味方を補助する最高の宝具だと思いますよ。実に貴方らしい。
それで、他の宝具は・・・」
「あるわけないだろ。俺はこの通り作家様がエセキャスターの位に無理矢理封じられた三流も三流、貧弱脆弱やる気なしの大外れサーヴァントだからな!!!せいぜい自分の運のなさを壁にでも八つ当たりして泣いてろ」
「外れどころか大当たりもすぎるくらいの幸運なんですけどねえ。ハンス、貴方はいつも『誰か』の物語を書いている、そうですね?」
「・・・文字を書き連ねるくらいしか取り柄がないからな。いやそれしか能がないともいうが。・・・なんだリーブ。この俺の根幹すら気にくわないのか?ならさっさと契約を切れ。仕事などない自由気ままな浮遊霊になって四六時中罵詈雑言を振りまいてやる」
「切りませんよ。私が気になるのは、他の誰のためでもない、ハンス、貴方自身の物語についてです」
「・・・は?俺の?何が気になるのだ馬鹿め」
「あなた自身の物語は、一体誰が書くだろうか、と」
「余計なお世話だ。そもそも俺は生前自伝を一応書いてはいる。それ以外に必要あるものか」
「でしたら、私が書こうかな、と」
「・・・は?貴様。ワークホリックが一周して遂に惚けたか?介護認定が必要ならさっさとシャルアにでも申請しろ。あの女なら無駄を省いた的確な処理をするだろうよ」
「処理って・・・。恐ろしいですね。私は本気ですよ。折角こうして会えたのですから、私が貴方の物語を綴ってもいいんじゃないかと思っただけです」
「何が思っただけ、だ。そんなくだらないことは今すぐ銀河系の彼方に捨ててこい。ああこの無駄で馬鹿馬鹿しい世の中に新たな最低最悪駄作中の駄作が増える結果しかありえんのだからな!!!いいか。俺も作家の端くれ。いくらこの世界の元人間ではないといっても、これ以上文学レベルを低下させるよう無味乾燥な物語など、見過ごすことはできん!いやその前にくだらない本にゴーサインを出す出版社がいるわけがないだろうがな!!!」
「私が書きたいのですよ、ハンス」
「いい加減にしろ。こんなどこにでもいるありふれたつまらん男なんぞ書くだけ無駄、かつ無謀、いや無益なことをするくらいなら俺が世界中の文字を駆逐してやってもいい!!!」
「どこかありふれた男ですか。私にとってはとても興味深い人物ですよ、ハンス」
「やめろ、それとも貴様も幼少の男に何かケのあるタイプか?貴様の趣味なんぞ口出すつもりはないが、俺を巻き込むな!」
「誤解ですよ。そんな趣味はありません。それで題名ですが。『ハンスの為の物語』では捻りがないと思いましてね」
「スルーするな。そもそも貴様のように金と権力と人脈がある奴が暴走するとロクでもない!!!ふん、もし貴様が万が一、億に一でもそんなものを書き綴ったものなら、頁が全て真っ赤に染まるくらい校正したうえで笑いながら焼却処分してやる!!!」
「では読んでいただけるのですね!うーん、タイトルは何にしましょうかねえ」
「いいから貴様は人の話を一秒でも聞く努力をしろ!!!」

fin.