※「Heaven’s here」で記憶喪失のリーブさんがセブンスヘブンに厄介になってます。
開店間際のセブンスヘブン。私はいつも通り2階に引き籠ろうと階段に向かっていたが、
「あ、あのあのあの・・・!!!」
呼びかけられ、振り返る。そこには顔を伏せたデンゼルが立っていた。
おかしい、と私は首を傾げる。彼は、いつも真っ直ぐに相手の目を見るというのに。
「・・・どうかしましたか?」
「そ、その、り、リーブ、に、い、」
「私に・・・何か?」
「そ、そうじゃなくって、その・・・」
益々俯いてしまう彼が不思議で、手を差し伸べようとする前に。
「リーブお兄ちゃん!」
マリンの楽し気な声に遮られた。
「・・・え?」
マリンもはっきりと物を言うしっかりした少女だけれども、意味を取りかねて固まった。
お兄ちゃん?
誰が?
私が止まっているうちに、子供たちはわいわいと騒ぎ出した。
「マリン!俺が、先に!」
「だってデンゼルがぜんっぜん言わないんだもの。私が先に言っちゃった!」
「あ、あの・・・?」
どういうことですか、と尋ねることも出来ず混乱する私に、マリンがにっこりと満面の笑みで答えてくれた。
「ティファがね、リーブさんのこと、『お兄ちゃん』、って呼んでみて?って言ってたから!」
はた、と回想する。
確かに、ティファにデンゼルの兄のようなものではないのか、という話をされたことはあったけれど。更に、ティファたちが私の家族になるわ、と言ってくれたこともあったけれど。
「ティファさん・・・あれ、冗談だったんじゃ・・・。それに、マリンちゃんまで・・・」
「だってね・・・」
マリンちゃんがいうところによると、ティファはデンゼルとこんな会話をしていたらしい。
* *
『お、お兄ちゃん!?』
『変かな?でも、デンゼルにとって、ルヴィさんはもう一人のお母さんなんでしょ?』
『う、うん』
『そして、ルヴィさんはリーブのお母さんでしょ?』
『・・・うん』
『だったら、やっぱり兄弟みたいなものじゃないの?』
『え、ええええええ!?』
* *
「でね?デンゼルのお兄ちゃんってことは、私の兄ちゃんってことだもんね!」
「ね、と言われましても・・・」
どう考えてもおかしいですよね、と指摘するまえに、マリンが私をじいっと上目遣いで見上げた。
「・・・駄目?」
「うっ・・・。ま、まあ私も、デンゼル君やマリンちゃんみたいな兄妹がいたら嬉しいですけど・・・」
「本当!?」
「ええ、勿論ですよ」
「・・・じゃあ、その、リーブ、お、兄ちゃん・・・」
「デンゼル照れてるーー!!!」
「う、煩いな!」
* *
その晩、珍しくクラウドが仕事を終えて帰ってきた。カウンターにつく彼に水を渡す。
「クラウドさん、お疲れ様です。今日は早かったんですね」
「ああ。・・・ところでリーブ」
「はい」
クラウドは感情の読めない声で、さらりと爆弾を落とした。
「あんたもうちの子になったのか」
「・・・。はいいい!?ど、どういうことですか!?」
「ティファが、あんたはデンゼルの兄だと」
さくっと答えられ、私はがっくりとカウンターに縋った。
「ティファさん・・・。クラウドさんにも言ってたんですか・・・」
「・・・俺は別に構わないが」
「クラウドさん!?」
そんな馬鹿な、と驚愕の目でみていると。クラウドが僅かに目を見開く。
「・・・ん?俺が父親になるのか?」
「・・・若いにもほどがありますよ、クラウドさん・・・」
fin.