64.指示

※もしもスマホゲームFGOイベント「深海電脳楽土 SE.RA.PH」にリーブさんとハンスが巻き込まれたら。

「・・・ここは?」

先ほどまでWRO局長室にいたはずが、眩しい光に包まれたと思った次の瞬間、音のない静かな場所に立っていた。暗闇、ではないが薄暗い巨大な空間。足元には青白いタイルが広がっている。見上げれば天井はなく、空でもない果てしない光景に泡が時折上っていく。深海、だろうか。空気はあるのに?

「・・・リーブ。貴様、何かやらかしたか?」
「はい?」

声につられるように足元を見れば、いつも以上に眉間の皺を深くしたハンスがいた。

「ええと、まだ何もしてませんが?」
「する予定はあったのか馬鹿者!何があったかしらんが俺まで・・・いや待て。ここは・・・」

珍しく言い淀むハンスを見て奇妙に思う。何でも言い切ってしまう観察力に優れた彼が、見極めるように周囲を見渡す。そして、深く、深くため息をついた。

「・・・マスター。残念ながら、ここは貴様の世界ではなさそうだ」
「では、異世界ですか。ハンスの世界ですか?」
「少しは疑え!適応力がありすぎるのも困ったものだな!」
「だってそうなのでしょう?」
「・・・」
「それで、ここは何処でしょう?」
「・・・別次元の俺のいる世界らしい。要はサーヴァント同士が生き残りと聖杯をかけて戦う文字通り弱肉強食の世界。貴様なんぞあっという間に消えるだろうよ!」
「サーヴァントが戦うって・・・武器で、ですか?」
「それ以外に何があると?貴様のように生ぬるく話し合いで妥協を引き出せる世界ではない!それから俺は最弱な作家なうえにレベルは1だ!精々余命を楽しんでおくことだな」
「私が戦います」
「はあ?」

呆れた顔をしているハンスをみながら、私はスーツの懐から銃を取り出す。護身用だが、生き残ればいいのならば使えるはず。

「ハンスを守りながら、元の世界に戻ればいいんですよね?ああ、それからこちらのハンスは捕まっているなら助けにも行かないと・・・」
「待て。貴様の頭はお花畑か?現実と夢を混同してないか?過労気味に異世界召喚は確かに正気を疑うだろうが、一つ言っておいてやろう。まず、貴様は戦えん」
「え?ですが、一応銃は使えますよ?」
「貴様はあくまでマスターだ。サーヴァントである俺に指示はできても、直接戦闘はできん!」
「そんな!マスターでも戦えるんじゃないですか!?」
「例外中の例外以外は戦えん!諦めろ!」
「じゃあ例外になります!」
「貴様ではなれん!」
「何故ですか!?」
「・・・礼装という特殊な服を着こまない限り、マスターは戦闘が出来ん」
「それ以外はないのですか?」
「・・・。貴様では当てはまらん」
「そこを何とか!」
「ええい、諦めろ!前々回のマスターのように史上最強最悪の悪夢になるという欲望がある毒婦なら強化ができるが、貴様のように星の平穏を願う馬鹿を強化したところで貴様自身の戦闘能力は毛ほども増加せんだろうが!」
「い、今から願えば・・・」

思わず反論したが、矢張り切って捨てられた。

「貴様には無理だ。いずれにせよ俺が間に合わん。サーヴァントにかち遭った時が貴様の最期だろうよ。今のうちに遺書でも書いておけ」

冷静なハンスの言葉に、腕を組んで暫し思考する。
どうやってもこの二人では戦闘にならないらしい。ならば。

「では、情報を収集しつつ味方を探すところからですね。行きますよ、ハンス!」
「貴様、人の話を聞け!!!」

fin.

FGOのイベントしつつ、まだハンスに会えていませんが・・・もしうちのリーブさんがあっちに行っちゃっても、リーブさんは何処に行ってもリーブさんだと思います。