65.育成

※もしもスマホゲームFGOイベント「深海電脳楽土 SE.RA.PH」にリーブさんとハンスが巻き込まれたら。「教会」の続き。

「あの、リーブさん・・・いい?」
「何でしょう?」
「って・・・ええと、何をしていたの・・・?」
「掃除ですよ」

ぽかんとしている靱葛に、雑巾代わりのハンカチを振って見せた。
異世界に飛ばされて、とにかく正気のマスターである靱葛の仲間にしてもらい。私達は本拠地としているらしい教会に匿ってもらっていた。戦力にならない私はできることをしたかっただけなのだが、驚かれたらしい。

「別にいいのに!元もよく分かんない空間だし・・・」
「まあ私の気休めだと思ってください。それで、何でしょう?」
「ええとね。・・・これ!これをハンスに使ってほしいの!!!」

少女が頭を下げて、両手に載せていた複数のカードをこちらにすっと差し出した。

「・・・これは?」
「種火、だな」

ふん、と言いたげに現れたハンスがベンチに腰かける。傍観者と言わんばかりの遠い距離だった。

「これ、使うとハンスはどうなるんです?」
「別に」
「レベルが上がるんだよ!!!」

靱葛が顔を上げた。ぱあっと笑顔が輝いている。

「レベルって・・・そういえば、うちのハンスはレベル1なんでしたっけ?」
「ああ。あの世界にはレベルアップさせるアイテムがないからな」
「経験値、ではないのですね?」
「その経験もさせてないだろうが、貴様」
「え?童話作家としてのレベルは・・・そうですね、既にカンストしてましたよね。すみません」
「謝るところがずれているぞ馬鹿者!」
「それで、何故これを・・・うちのハンスに?」
「だから人の話を聞け!!!」

離れたところで何やら抗議しているハンスをスルーし、目の前で期待を込めた目をしている少女に向き直る。

「だってね。私が気になるというか・・・。このハンスは戦闘に出さない。それはそれで素晴らしいことだとは思うんだけど、これから何があるかわからないし、流れ弾とか当たったら嫌だし・・・」
「流れ弾くらいで死ぬか阿呆」
「そうですね。仰る通りです。でも、使わせていただいていいのですか?そちらのガウェイン氏や他の皆さんは・・・?」
「いーの!ガウェイン達は既にレベルMAXだから!!!」
「ありがとうございます。では使わせていただきますね」
「うん!」
「だから貴様ら、人の話を聞けえ!!!」

fin.

好きなサーヴァントがレベル1でうろちょろされていたら耐え切れなくなった靱葛というオチ(笑)。だって気になるじゃないですかー。