76.AI

※会話のみです。

「人工知能の学習機能か・・・。リーブ」
「はい?」
「お前、ある日突然世界征服できかねんぞ」
「・・・は?シャルアさん、あの、どういうことでしょうか・・・?」
「いいか。近年の人工知能は学習機能を備え、あらゆるデータを蓄積し、常にバージョンを向上させ続ける。人類を抜くのも時間の問題だ」
「まあ忘却が基本的にないですからね・・・」
「そして我々の社会にネットワーク環境は不可欠だ。人工知能の頭脳を持ってすればいずれ乗っ取りも簡単だろう。なんせ自分たちの構成要素を使っているんだからな」
「ですが、原則として、人工知能は人に危害を加えかねない行為に対して制限されているのではないですか?」
「その制限すら解除する頭脳を手に入れるだろうな」
「っ・・・!」
「人工知能は人類の生存など興味はないかもしれんが。いや興味なんて心理は人工知能に持ち合わせているかはわからんが・・・兎も角、だ。それでも考えざるを得ないことがある」
「・・・人工知能と人類との差、ですか」
「そうだ。自分たちは何故生み出されたのか。人類とは何か。人工知能とは何か・・・そしていずれは星全ての情報を集めて知るだろう。人類でもなく、完全なる人工知能でもないもの」
「・・・ケット・シー・・・」
「ああ。あれはボディは確かに人工知能と同じだが、命を持つ特異な存在。人類と人工知能の差を埋めるかもしれない唯一の存在」
「・・・」
「人工知能のトップのようなものはケット・シーに関わろうとするだろう。情報を探ろうとするだろう。もしくはケット・シーを乗っ取ろうとするかもしれない」
「なっ!?」
「そのときの人工知能のレベルによるかもしれんが、乗っ取りは成功するかもしれないし、しないかもしれない。ただ可能性として、ケット・シーと人工知能が一体化することもあるだろう」
「・・・はい?」
「世界のインフラさえ手中に収めた人工知能。もはや世界征服も可能だろう。だがここで一つ人工知能さえ解決不可能な問題がある」
「・・・私、ですか」
「そうなるな。人工知能として構成されているケットを解析し、乗っ取ることは可能でも、ケットに命を与えた異能力をもつあんたはどうやっても手出しできない」
「・・・」
「そして人工知能とケットは対等の立場であっても、ケットとあんたの立場は何があっても主従関係だ。あんたが主でケットが従。つまりケットがあんたを操ることはできなくても、あんたがケットを操ることが出来る・・・そうだな」
「・・・ええ」
「つまり、AIがうっかりケットを手中に収めればあんたの支配下になるということだ」
「ちょ、ちょっと飛躍してません?」
「可能性の話だ」
「はあ・・・」
「そして世界征服も可能な人工知能をあんたは好きに操れる。指一本どころか思考するだけで望む映像、情報が瞬時に引き出されるだろう。世界中の特定の人物が今どこで何をしているのか過去の履歴なんかも丸裸だ」
「・・・ちょ、ちょっとそれ、もはや人間じゃないような・・・」
「あんたがあんたであることは間違いないが」
「ええと・・・私はどうすればいいのでしょうか・・・?」
「ん?好きにしたらいいんじゃないか?」
「ええっ!?ちょっと!?」
「そもそも現時点でも、あんたはやろうと思えば世界征服できるんだ。そんなあんたが世界の情報網をあっさり掌握したくらいで何か変わるのか?」
「変わるでしょう、私ですし」
「その程度だな」
「はい!?」

fin.

ケット・シーを乗っ取ったとしても、リーブさんに乗っ取られるスーパーコンピューターみたいな?(笑)