82.GPS

※「Heaven’s here」よりは後。

いつものWRO寮のリビングで、シャルアはふと思いついた。

「ハンス」
「なんだ?」

同じくリビングのソファにいた童話作家が面倒くさそうに返事を寄越した。見た目はどうみても小さな少年だが、彼はサーヴァントというもので、身体も霊体だという。

「お前、ピンチになったら姿を消すんだな?」
「当然だろう!何故作家の俺がピンチの際に働かねばならない!最弱の役立たずらしくとっとと消えるが勝ち、肉体労働は貴様らの仕事だろうが!」
「それはいいんだがな。その場合でもリーブと共にいる筈、という認識で間違いないか?」
「無論、腐ってもサーヴァント。マスターと共にいるのが大前提だ。それに俺は基本的に単独顕現スキルを持っていない!リーブから長く離れて存在することは出来ん」
「それはよかった」
「・・・ほほう?俺をリーブ発見器にでもする気か?」

きらりとハンスの目が光った。流石人間観察LevelMAXの童話作家様だ。余計な説明は不要らしい。

「・・・あの、何の話ですか?」

盆に紅茶とクッキーを載せて、リーブが不思議そうに話に加わった。紅茶はハンスのリクエストのアールグレイらしい。

「俺はマスターのGPSというわけだ!」
「ええと、どういうことでしょう・・・?」

紅茶を皆に配りつつぽかんとするリーブとは対照的に、自室からリビングにやってきた妹があ、と声を上げた。

「つまり、リーブと行動を共にするハンスは、仮にリーブが行方不明になった際、居場所を把握できる・・・ということですか」
「そうだ」
「・・・はい?」

リーブがまだ話を飲み込めないらしく首を傾げているが、要はこうだ。
あってはならないことだが、護衛をつけていてもリーブに何かあり仮に誘拐だの行方不明になった場合でも・・・サーヴァントであるハンスはリーブと共にいる筈だ。姿は消しているだろうが。そしてリーブ自身が現在地を把握できなかったとしても、ハンスは把握している筈だ。ハンスから場所を特定させ、リーブはケット・シーを通じて連絡を寄越す。勿論WROも全力で捜査するだろうけれども、確実に居場所を特定できる。

「ふん、そのくらいならば協力してやってもいい。最も救出劇には全く参加する気はないがな!」
「ああ、問題ない」
「・・・あの、私、まず行方不明になんてなりませんから・・・」
「「「嘘つけ(ですね)」」」

3人の台詞が見事に重なったところで、白黒猫がリーブの足元にやってきて、大袈裟にため息をついた。

「リーブはん、それは今更、ゆーやつやで」
「ちょっとケットまでどういうことですか!」

fin.

ハンス→霊体化で敵に見つからず居場所把握
ケット・シー→インスパイアでリーブと連絡

この二人?がいたら、リーブさんが何処に捕まっていても居場所がすぐわかりそう。ケット・シーとの連絡には電波いらないし(笑)。