43.有効活用

※「救出」「召喚」を読まれているとちょっと繋がります。

WRO本部食堂横に、カフェテリアがある。
そこに、期間限定で「ミッドガル珈琲(お試し)」が1杯50ギルで現れた。
隊員達は何故壊滅したはずのミッドガルで珈琲?と不思議に思いつつ、50ギルという安価に釣られて注文するものがいたのだが。

「・・・う、旨い!!!」
「ど、何処で売っているの!?」

と大好評のうちに一ヶ月のお試し期間は終わってしまったのである。

*   *

「リーブ」
「はい?」
「ミッドガル珈琲・・・あれ、あんたが仕込んだやつだろう」
「仕込むというか・・・まあ、試作品ですよ」

随分前からリーブはミッドガルのその後について頭を悩ませていた。
嘗て神羅の全盛期を誇る大都市であったが、ライフストリームやオメガ戦役を経て今や廃墟と化している。
再開発には解体が必要だが、自分が設計したものだから、プレートを支える柱の強度や耐久度などは手に取るように分かる。
分かるのだが、解体には巨額の費用がかかる上に、一部の地区はモンスターの住処にもなっている。

そこで。
まずは解体前の有効利用を考えることにした。

大都市の廃墟ということで、土地は有り余っている。
プレート下の自然環境はいいとはいえないが、
プレートの上ならば太陽も近い。
ならば、ビニールハウスを設けて、
環境を整えれば農業が可能ではないか。

珈琲に必要な温室とし、かつ品種改良を加えた試作珈琲。
一般人は立ち入り禁止だが、ケット・シーはフリーパスである。
モンスターの住処から離れた地区で管理し、万一現れてもケット・シーなら闘うことはできる。

「品種改良にロッソさんやカールさんのご協力をいただきましたので、
味は保証済みですし。
どうやらたまにロッソさんが温室の様子を見に来てくださっているようで・・・」

ロッソ。
嘗てオメガ戦役で敵、DGSとして立ちふさがった朱の色を冠するもの。
だったのだが、今は植物学者のカールと共に、
ニブルヘイムの山小屋で植物を研究する日々を送っている。

「・・・流石にエアリスさんの教会のように
何もせずに花を咲かせる奇跡は起こせませんが、
ビニールハウスという区画を区切って手を加えてやれば・・・」

それが人工的な環境だとしても。

「・・・例えミッドガルでも、
何とか花を咲かせることはできるようですね・・・」

いつか、異世界の少女が教えてくれたように。

願えば、いつか花は咲く。

ミッドガルでの悲劇は消えることはないけれど。
そこから何か新しいものを生み出すことができるのではないかと。

「・・・で。
今度はいつ出るんだ?」
「え?あ、もしかしてシャルアさんも試されたのですか?」
「ああ。売り出すならあたしが先行予約してやる」

fin.