「新年」
「「「明けましておめでとうございます!」」」
一家で声を合わせた後に、さくっと切り込んだのは私のサーヴァントだった。
「ほう。めでたくもない新年をわざわざ祝うとは無駄の極みだな!」
「まあまあ。ハンス、『一年の計は元旦にあり』といいますから」
「なんだそれは」
「・・・確か、一年の予定は年始に計画するべき、というウータイの諺、教訓です」
「ですから、その年が目出度くなるように年始こそ祝っておかなければいけませんよ?」
「・・・ですが謂れとしては、ご馳走を食するのではなく一年の予定を熟考するのが真の祝いとなっていましたが?」
「熟考するのも大切ですが、それよりもイベントを楽しむ方が重要ですよ!!!」
「ふん。貴様に計画させてもお目出度い娯楽が増えるだけだろうに!貴様が無駄に仕事を増やすのは構わんが、断じて俺を巻き込むな!!」
「神羅屋敷での定期童話朗読会、とか如何ですか?ああ、別にハンスが朗読する、というのではなく有志を募って・・・」
「そんなことより早く雑煮を寄越せ」
「シャルアさん・・・」
「いやー今年は賑やかやな。ええことや」
「ん?どいうことだケット・シー」
「いっつもリーブはん、大晦日もひとりでパソコンに向かって気いついたら新年、て感じやったしな」
「ちょ、ちょっとケット!」
「まさしくめでたくも何ともない年越しだな、マスター!」
「は、ははは・・・」
発言順にハンス、私、シェルク、シャルア、そしてケット・シー。年末に引き続き一家となった彼等と過ごせる年始というのは、想像以上に暖かいもので。浮かれていた私に、シャルアが突然切り込んできた。
「それはさておき、だ。お前、まさか自爆技、もしくは自滅技なんぞ持ってないだろうな?」
「・・・はい?」
ぽかん、と相手を見返してしまった。
WRO寮、最上階。リーブ一家は住まいとなった部屋に炬燵を囲んでいるのだが、ご要望通り雑煮をシャルアの前に置いた途端睨まれた。固まった私を解凍させたのは、青い髪の少年、ハンスである。
「おい。餅が伸びるだろうが。さっさと俺のを寄越せ」
「あ、はい」
「これではどちらがマスターかわかりませんね」
「その前にどっちが上司で部下、かつ妻か夫か分からんとこあるけどなあ」
「えええ・・・!?」
呆れたように肩を竦めたのはシャルアの妹であるシェルクに、とどめを刺したのは分身のケット・シー。この5人で暮らすようになってまだ一ヶ月と経っていないはずだが、非常に仲がいい。仲がいいのは結構だがなんとなしに自分は負けている気がする・・・。
「そ、それは兎も角・・・どうしたんですかいきなり」
「ああ。部下が去年相当入れ込んでいたゲームの最終章、どうも主要キャラが自滅技で主人公を助けるラストだったらしくてな。酷く落ち込んでいた」
「はは・・・」
「そして自滅技の有名どころのマンガがまたゲームになったらしくてな。これが現実になったら不味い!と、部下が心配してやたらと聞かれた」
「ええと・・・」
「因みにあたしにそんなものはない」
「私も、ありません」
「俺もないな。そもそも俺はキャスター紛いの作家だ!攻撃など脳味噌筋肉系の仕事であって頭脳労働派の仕事ではない!」
「で、どうなんだ」
「ええと・・・」
考え込む私に、シェルクがふと私の分身をみた。
「そういえば、ケット・シーのリミット技は大丈夫なのですか?」
「え?」
「へ?ボクでっか?」
「リミット技、とは何だ」
「ダメージを受け続けるとリミットゲージというのが貯まっていて、それが満タンになると特殊な大技が使えるんですよ。この技は人によって異なります。ハンスだと貴方の宝具、『貴方のための物語』、に概念的には近いのではないですか?怒り状態だとゲージが貯まりやすいという特徴がありますが」
「ほう。確かに宝具はNPが貯まれば発動するもの。似たようなものかもしれん」
「それで、ケット・シーのリミット技に自滅技はあるのか?」
「ケット・シーのリミット技ですか・・・」
雑煮を配り終えて、私はケット・シーの隣に座る。ミニ座布団を3つ重ねた彼と同じく首を傾げた。
ケット・シーのリミット技は、レベル1のダイス、またはレベル2のスロットである。まあ幻のレベル3があるという話だがそれは扨置き。
特に強力なのがレベル2のスロット。3つのスロットが同じ絵柄に揃ったとき発動する技は絵柄により様々な効果があり、強力な攻撃、または回復が可能となる。
・・・のだが。
「「・・・あ。」」
同時に最高に拙いリミット技に行き着いた。
「おい!」
「なんですか?」
「余程拙いのがあったらしいな。よし、ネタを寄越せ!」
「ええと・・・」
話す前から怒気の見える妻に、冷徹に冷め切った妹、そして期待に目を輝かせるサーヴァントに、私は苦笑しながら説明した。
3スロットを全て巨大ケット・シーの絵柄に揃えることができれば発動する、スロット最大の大技。その名も
<オールオーバー>
『敵全体を一撃死の状態にする。無効ステータスも無視するため、ウェポンも一撃死可能。』
というチート的なリミット技があるのだが、これを最後の絵柄だけミスしてBARにしてしまうと・・・
<ジョーカーデス>
『味方全体を一撃死の状態にする。ステータス防御も無視。』
が発動して、文字通り味方が全滅する、と。
「「「・・・」」」
暫し気まずい沈黙が流れ。
いち早く復活したシャルアがケット・シーを睨み付けた。
「・・・ケット・シー。お前、絶対にケット・シー絵柄を揃えようとするな。他のにしろ」
「揃えば敵全滅なんやえどなー」
「止・め・ろ」
「・・・りょ、りょーかいや・・・」
シャルアに脅されたケット・シーをくわばらくわばら、とこっそり伺う。シェルクがぱちぱちと目を瞬かせた。
「・・・ケット・シー。貴方、実は最強だったのですね」
「いやーでも滅多に揃わんで?」
「ケット・シー?」
「や、やりまへんから!!!」
「揃ったら敵もしくは味方が全滅か。正にスロット、ギャンブル要素満載すぎるな!貴様よくそれで生き残ったものだ!」
「ボク、6号やけど?」
「ケット!」
「うわ、しもた」
「・・・どういうことだ?」
「え、えとその話は後程・・・」
しどろもどろになりながらハンスの追及を誤魔化したものの。
「ケット・シーの自滅リミットブレイクは把握した。それで、あんたはどうなんだ?」
「え?」
うーんと顎鬚に手を当てて考えること暫し。結論はやっぱり変わらなかった。
「・・・それが、・・・ないんですよね・・・」
「ない、だと?」
「ケット・シーにあるならリーブにもありそうですが」
「うーん・・・?」
「気付いていないだけだろうが。貴様、過去に激怒したことくらいあるだろう?一応感情のある人類ならな!」
「ありましたっけ・・・?」
「こりゃあかんなあ」
心当たりの全くない私に、シェルクが切り出す。
「では、希望のリミット技でもあるのですか?」
「希望、ですか・・・」
ふむ、と仲間のリミットを思い出してみる。
クラウドを含む多くの仲間がもつ最大の技を展開する攻撃特化のもの。またはエアリスのように全回復および一定時間無敵を追加する回復+防御特化のもの。
どちらも甲乙付けがたい素晴らしいリミット技である。
「攻撃もいいけれど回復も捨てがたいですよねえ・・・」
優柔不断で決めきれない私にシャルアが呆れ顔でため息をつく。
「だからケット・シーは盛り沢山なスロットになったのか・・・」
おかわり!とシャルアにお椀を渡され、はいはい、と受け取る。御餅は2個入れろ!と矢継ぎ早の注文に苦笑する。気に入ってくれたのなら何よりですけど。
「はは・・・。まあ何かしらの攻撃くらいはしたいですが・・・」
おかわりを入れる序でにシェルクとハンスに聞いてみたが、二人は小食で一杯で十分らしい。
はむはむ、と少しずつ御餅を食べているシェルクが可愛らしい。ハンスはびろーっと御餅を伸ばしていた。
それが漸く切れたところで、彼がふん、としたり顔で私を見上げた。
「馬鹿め。貴様、人の本質は見抜けても己に関しては節穴か?考えてみればわかるだろうよ。マスターは手より先に口がでるタイプだ。武器を使う暇などあるわけなかろう!」
「なっ・・・!」
「「「確かに。」」」
「ううっ・・・」
心当たりが有りすぎて項垂れたとき、ピンポーンと気の抜けたチャイムが鳴った。
扉を開けば、年始の護衛まで勝手に引き受けた護衛隊長が立っていた。
年末実家に帰っていたのだが、その実の母から「あんたの顔なんぞ見飽きたわ!任務を全うできない息子なんぞ帰ってくるんじゃないよ!」と追い出されたらしい。なかなか強いお母様だと感心してしまった。
それで序でにお雑煮でも食べましょう、と部屋に誘ったのだが。
やってきたレギオンはほいほいとハンスの隣に座った。私はシャルアとレギオンの雑煮入れるべく台所に立つ。新しい丸餅を網に乗せて、のんびりと火加減を調整する。
「そうそうレギオン。今、私のリミット技がない、という話をしていたんですよ」
「え?局長、リミット技あるじゃないですか」
「「「え!?」」」
「矢張り貴様の自覚が足りんだけか!」
「レギオン、どんな技だ!?」
ハンス、シャルアの両名に詰め寄られたレギオンが、自信たっぷりに言い放った。
「そりゃあもう・・・『脅す+説得+勧誘』ですよ、絶対に!!!」
「・・・。え?」
解説しましょう。
とある世界にあるというジョブ、話術士。
その中のアビリティ・・・つまり能力によると。
『脅す』=Brave(勇気)を20下げる。でも多分リーブのリミットなら99くらいは下げる。
『説得』=説得してCT(チャージタイム。これが100にならないと行動不可)を0にする。
『勧誘』=敵を勧誘して味方に加える。
私はばーんと台所の流し台を叩いた。
「ちょ、ちょっと!それでは攻撃も回復もできないじゃないですか!!」
「や、だってあんた。前に毒殺しようとした犯人を怒鳴った挙げ句、味方にしてたじゃないですか」
「そ、そうでしたっけ・・・?」
「ふん。激怒して味方を増やすなんぞ邪道極まりないな!」
「怒りの矛先がずれているあんたらしいな・・・」
取り敢えず台所から戻り、シャルアとレギオンに雑煮を配る。ケット・シーの隣に戻れば、分身はデフォルメの笑顔で更に補足した。
「勧誘くらいならリミットゲージマックスにならんくても発動してそうやな」
「あの、勝手に話を進めないでください・・・」
「リミットにならなければ『脅し』と『説得』は追加されないのかもしれません」
「シェルクさん!?」
分身どころか妹にまでまたしてもスルーされてしまった。止められないうちに、レギオンが拳を握って熱く語りだした。
「俺、見てて怖かったんですよ、あれ。あとシエラ号がDGSに襲われて脱出した直後のあんた!!!俺、マジで動けませんでした!!」
「あれはレギオンが悪いだけです。それにしても・・・ケットですらリミット技で攻撃ができるというのに・・・ううっ・・・!!」
「いや、ある意味最強ですけど?」
「そうですね。物理攻撃なら回避の可能性がありますが」
「ケット・シーのオールオーバーとやらと同じく回避不可か!」
「言葉を無視できても、あの絶対零度の空気で動ける奴はまずいないと思います!」
「で、でしたらシャルアさんは・・・?」
自分のリミット技が話題のままだとどうにも情けない展開になりそうで、取り敢えず妻に話を振ってみた。
「ん?」
「シャルアさんのリミット技は何ですか?」
「決まっている」
「はい?」
WRO屈指の天才科学者はさくっと答えた。
「銃の乱射だ」
一瞬、彼女の職業が頭から吹っ飛んだ。
「・・・。えええええ!?」
「ヤバすぎますからそれ!!!」
取り敢えず叫ぶしかない私とレギオン。それに対し、何事も観察しネタを探す童話作家様は今日も通常運転だった。
「物理攻撃の極みだな!シャルアのリミット時は霊体化して取材するしかあるまい!」
「取材はするんやな」
「当然だろう!貴様等の生体を把握してネタに消化するのが作家の性だからな!」
「新作を期待できるということですね。電子化はいつでも可能です」
「貴様、完全に俺の編集者か・・・」
「流石ですシェルクさん・・・。もうハンスの扱いは慣れたものですね」
「んじゃシェルクはんのリミットってなんや?」
「え?私・・・ですか?」
「聞きたいですね」
分身と揃って妹の返事を待つと。彼女はこくん、と雑煮を飲み込んで一言。
「敢えて言うならば、『無式』・・・ですね」
「『無式』?ありゃあシェルクはんの名称だけやなかったんか?」
「はい。事象を自在に書き換える能力です。相手へのダメージを「無効」に変換、己の行動をキャンセルして再実行。これを複数回実行することで『複数の攻撃を同時に施行したように』攻撃することが可能です」
「・・・そ、そんな能力だったのですか・・・!」
思わず息を呑む。
『無式のシェルク』。
それは嘗て彼女がDGでツヴィエートだった頃の名称であると知ってはいたものの、真の能力までは知らなかった。ネット空間に精神をダイブさせるSND(センシティブ・ネット・ダイブ)だけでも恐るべき力だというのに。
「・・・ほう。事実さえ書き換えることが出来る能力か!これは面白い!レギオン、貴様シェルクの『無式』とやらを喰らうがいい!俺が貴様の無様な敗北ぶりを最高の駄作に仕上げてやろう!」
「勝手に指名して勝手にあんたの創作の犠牲にしないでくださいーーー!!!」
「あ。いいですね、それ」
「きょくちょーーーー!?」
悪乗りしだした私を制する様に、シェルクがぽつりと呟く。
「ですが」
「はい?」
「『無式』の使用には大量の魔晄が必要です。今では不可能ですね」
「そ、そうですか・・・。それは体にも負荷が大きそうですし、封印した方がいいでしょうね・・・」
「そうだな。シェルク、その技は使うな。自滅技のようなものだろう?」
「・・・うん」
小さく頷くシェルクに一同がほっとしたところで、レギオンがはいっ!と当てて欲しそうに手を挙げたものだから。
私は。
「あ。シャルアさん、御餅まだありますよ?」
「そうか。一つくれ」
「はい」
普通にスルーしたのだが。
「ちょーっと!!!こんだけアピールしてるのに、スルーするなんて酷いですよ局長!!!」
「折角無視したのに蒸し返さないでくださいよレギオン」
「だーかーらーーーー!!!」
相変わらずのリアクションに満足し、仕方なく話を振ることにした。
「それで、何ですかレギオン?」
「俺のリミット技ですけど・・・!!!」
「斬撃ですよね。あ、御餅持ってきますね」
よいしょ、と立ち上がるとレギオンが拳を挙げた。
「ちょーっと!!!俺の適当な扱い振りはどういうことですかーーー!!?」
うがーっと勢いよく抗議するので、私は小皿を準備しながら彼を振り返る。
「どういうことも何も・・・いつものことじゃないですか」
「いつものことだな」
「通常運転というところか!」
「レギオンはんやし」
「流石ですね」
私に続き、息の合った一家の怒涛の追撃に。
「ひどーーー!!!!」
レギオンはあっさりと撃沈した。くううっと涙を拭う真似までしている。どうやら細かい芸が増えたらしい。御餅を一つ網に乗せながら感心していると、がばっとレギオンが顔を上げた。
「どうしました?」
「でーすーかーらー!!!そりゃ、斬撃ですけど、それだけじゃないんですって!!!」
「何が違うのですか?」
火加減を見ながら聞き返せば。レギオンがにやりと(やっと本題に入れたらしい)したり顔になった。
「俺、新たなリミット技を習得するため、クラウドさんに修行をお願いしたんですよ!!!」
「・・・。え?」
「どういうことだ?」
シャルアが雑煮を空にして護衛に振る。彼はピースサインまで寄越した。
「俺、以前クラウドさんにひとつだけ依頼を聞くって言ってもらってたんです。何を頼もうかずうっと考えてたんですけど、俺、もっと強くなりたいから」
「もっとですか?」
「もっとです。だって俺、ここにいる皆さんを守らなきゃいけないんですから!!!」
言い切ったレギオンが誇らしげで。
シャルアはふっと微笑む。
「成程な。あんたらしい」
ケット・シーがふりふりと手を振る。
「いやーレギオンはんは真面目やなー。そうは見えんけど」
「え、ちょっとケット・シー・・・」
レギオンが何か言いかけるのをシェルクがさくっと被せる。
「向上心、というべきでしょうか」
ハンスがほほう、と大袈裟に揶揄する。
「努力する若者とは気持ちがいいものだな!実るかは別だが。せいぜい肉体労働に励むがいい!」
「実らせますから!!!」
レギオンは楽し気なハンスに言い返していた。まだまだ彼の元気は有り余っているらしい。それは兎も角、私は。
「・・・な・・・」
火にかけていた御餅に亀裂が入る。
「『な』ってなんや?」
「どうしたリーブ」
御餅が少しずつ膨らんで、臨界点に達していく。
一同が振り返ると同時に、私は絶叫した。
「なっっっ・・・・んて羨ましい!!!」
御餅が見事に割れた。
「「「は?」」」
「何故私を誘ってくれなかったのですか、レギオン!」
上司というよりも個人的な感情で部下を詰ってみたものの。
「いや、あんた剣使えないでしょうが」
「その前に口が先に出るんだったな」
「リーブはん、まだ諦めてなかったんやなあ・・・」
「己の限界くらいは見極めた方が身のためだぞ、リーブ」
「・・・修行・・・」
案の定、さくっと皆に突込みを入れられてしまった。
「そ、それでも・・・!あのクラウドさん直々に指南してもらえるなんて・・・!」
私が御餅を皿に移しながら悔しさに身もだえしていると、すっ、と小さな手が挙げられた。
「・・・シェルク?」
彼女の姉が不思議そうに見守る中。名前を呼ばれた少女は淡々と意思表示した。
「では、私が参ります」
残りのメンバーがぽかんと彼女を見返した。
「シェルク!?」
「え?」
「なんやて?」
「・・・ほほう?」
「え、えーっと、シェルク統括・・・?」
だらだらとレギオンが冷や汗をかく中、シェルクがじっとレギオンを凝視した。
「バスターソードではありませんが、私もランスを用いた接近戦が得意です。よい機会ですから私も修行に参加します」
「しますって、その・・・統括??」
「クラウドさんには私が直接交渉しますから、問題ありません」
「シェルク統括直々の交渉なんて、クラウドさん断れないじゃないですかーーー!!!」
「クラウドはん、何気にシェルクはんには甘そうやしなあ」
「ダブル修行か。俺はリミット技とやらは見たことがない!取材に行かせてもらおう!」
「だがシェルク、余り危険なことは・・・」
「危険じゃないよ、お姉ちゃん。それに、私も今の自分に使えるリミット技を見つけ出して、・・・今度は私がお姉ちゃんやみんなを助けたいの」
「シェルク・・・!」
「相変わらずラブラブな姉妹ですねー。わっかりました!俺からもクラウドさんに頼んでみます!」
「よろしくお願いします」
勝手に盛り上がる彼らを横目に、私は無言でシャルアの前に御餅を置く。そのままケット・シーの隣から炬燵に入った。
「・・・リーブ?」
しっかり御餅を口にしながらも怪訝そうな妻がこちらを伺い。私は彼女をきっと睨みつける。
「どうしてシェルクさんだと簡単に話が纏まるのですか!!!」
「あんた・・・まだ懲りてなかったのか」
「そりゃ適性やろ」
「ケット・シーは黙ってください!」
「リーブの分まで私が新規リミット技を会得してきますから、問題ありません」
「そういうことではなくてですね・・・!!!」
「よかったなマスター!これで無意味な努力はせずに済むというものだろう!」
「無意味と断定しないでくださいよハンス!?」
「俺も頑張ります!!!」
「レギオンまで!?」
いつもならからかい倒す相手にまで止めを刺されてしまった。
私はむむむ、と眉を寄せて考えた。ハンスのいう通り自分のリミットでは武器を使えないのだとしても。口が使えるのなら・・・もしかして、魔法系なら使えるのではないか。
「・・・分かりました。そこまで皆さんが仰るなら・・・」
「なら?何です、局長?」
余裕でニタニタしている護衛隊長に、私はびしいっと宣言した。
「明日からボーンビレッジに泊まり込みます!!!」
「は?」
「ん?そこは確か発掘作業とやらが出来る場所と言ってなかったか?」
「そうです!!!意地でも河童シリーズを掘り当てて見せます!!!」
がたん、と音を立ててレギオンが立ち上がった。
「や、やめてください、局長!!!!それ、真っ先に俺が犠牲になるパターンですよね!!?」
「当たり前です!!!」
「何が当たり前ですかーーーー!!!」
ヒートアップする私とレギオンを置いて、残りのメンバーはやれやれと肩を竦めていた。
「あいつらは相変わらずだな・・・。だが、河童シリーズとは何だ?」
「ふむ。河童という伝説の妖怪に変身するための魔法を取得できるらしい。俺も見たことはないが、マスターは非常に興味があるようだったな」
「では、レギオンは蛙のみならず河童にもなれるということですね」
「いい取材になりそうだ!リーブ、そういうことなら俺も手伝ってやろう!」
「本当ですか、ハンス!!!是非お願いします!!!」
「お願いするなーーー!!!」
fin.