古龍渡り

<注意事項>

科学者ハンター設定、G級ハンター後。
※モンハンワールドのネタバレは・・・大したことないです。導入部ですし。
※検索ワードで間違ってきちゃった方、攻略には関係ない二次小説サイトですので、さくっと回れ右してください!

 

「新大陸に行かせてくれ」
「それは・・・」

戦闘街ドンドルマ。町長の執務室を訪れたシャルアの第一声に、私は思わず口ごもった。

新大陸。

ドンドルマより海を隔てた遥か先に存在する大陸。荒れ狂う大海に遮られ長らく到達は不可能とされていたが、近年の航海技術の進歩により上陸が可能になった。これまでに4度のハンターが派遣されているものの、狂暴なモンスターが棲まう大陸の全貌は未だに明らかになっていない。

そして何よりも。

「『古龍渡り』、ですね?」
「そうだ」

間髪入れずにシャルアが頷く。モンスターの頂点に君臨する古龍たち。ひとたび人界に現れれば忽ち天災を齎すことも少なくない彼らの生態も未だ解明されていない部分が多い。その一つが、『古龍渡り』であった。
彼らは約10年に一度、決まった方角へ飛んでいくという。今年はその当たり年である。彼らの目的地は新大陸であるが、何故新大陸へ向かうのか分かっていない。

シャルアはハンターとして、そして狂竜ウイルス研究所の所長として古龍渡りの謎に挑みたい、というわけだ。

「・・・貴女には出来ればドンドルマのハンターたちのサポートをお願いしたいところですが・・・」
「大方のアイテムの素材、調合リストはサラに伝えてある。素材と調合済みの薬の在庫もまあ一年分はあるだろうよ」

彼女は腰に手を当て、にやりと笑う。私は両手を挙げて降参した。

「準備万端ということですね・・・。わかりました。新大陸にも学者たちの拠点があると伺っています。ドンドルマの防衛についてはケットたちG級ハンターたちに依頼しましょう」
「ありがとう、リーブ!」

よっしゃ!とガッツポーズを決めるシャルアは非常に勇ましい。相変わらず頼もしいことだとうっかり思ってしまった。彼女の新大陸志願については予想していたものの、こっちは心配でたまらないというのに。

「これで新大陸の新素材の研究もアイテムの開発も出来るからな!ドンドルマの設備も強化出来るに違いない!」
「・・・それは楽しみですね。聞くところによると、新大陸には竜人と呼ばれる古代からの知識を受け継ぐ種族もいるとか。是非お話を伺いたいものですねえ・・・」
「よし、ならあたしが見つけて持ってきてやる!」

勢いでやりかねない彼女に慌てて口を挟む。

「え、いえ竜人を持って来るのはちょっと」
「何か問題か?」
祖竜の剛角のような、アイテムではないですからねえ」
「駄目か」
「駄目です」
「・・・むう」

シャルアは腕を組んで考え込んでしまった。竜人を持って帰る・・・シャルアの実力なら出来かねないが、相手は人。うっかり持って帰ってしまったら誘拐である。危ない危ない。

「まあ新大陸での発見は他にもあるでしょうから、そこまで気になさらなくても」
「しかしあんたからの任務を破棄するのは・・・」
「いえ、任務ではないですから。それに、そんなことよりも遥かに重要な任務があるじゃないですか」

渋るシャルアにきっぱりと断言すれば、彼女は心底わからないという表情で顔を上げた。

「?何だそれは?」

私はにっこりと笑って答えた。

「・・・貴女を含む全員が、無事に戻ってくること。これに勝る朗報はないでしょう?」

「リーブ・・・」

はっと目を見開いたシャルアが勝ち気な笑顔で返す。

「そうだな。だがあんたもだ」
「はい?」
「あたしの帰る場所はあんただからな。あんたも無事でなきゃ困る」
「シャルアさん・・・」

帰る場所、と言われて不覚にも感激してしまった。それを誤魔化すようにおどけてみせる。

「わ、私は大丈夫ですよ。街にいるわけですし、貴女のように危険な地に赴くわけでは、」
「あんた。ゴグマジオスのとき、巨龍砲の接続で戦闘真っ只中に乗り込んだな」
「そ、それは、あれがないと大変でしたし」
「そして逃げ遅れて死にかけたな」
「うっ・・・ちょっ、ちょっと時間がかかっただけじゃないですか」

ぎらりと眼光を強めるシャルアから視線を外して何とか答えるものの。
彼女は特大の溜め息をついた。

「・・・レギオンに厳命しておくか。あんたを一人にするなと」
「止めてくださいよ!子供じゃないですから!」
「却下だ」
「ええっ?!」

fin.

後書き。

遠い新大陸にいくシャルアが心配だという趣旨で書きだしたはずが、何故こうなった(笑)。まあいいや。そして交易船を利用して文通していればいい。